赤土汚染が魚類の分布パターンに与える影響を明らかにするために、沖縄県石垣島東部で赤土流出の影響が強い沿岸(赤土汚染区)とそうでない沿岸(赤土非汚染区)を選定し、それぞれのサンゴ場に1m×20 mのベルトトランセクトを7本ずつ設置し、トランセクト上に出現した魚類および底質を目視で記録した。その結果、生サンゴの被度は非汚染区で高く(60.5%)、赤土汚染区で低かった(12.2%)のに対して、死サンゴの被度は赤土汚染区で高く(72.8%)、非汚染区で低かった(25.9%)。両区における魚類の種数をみると、赤土汚染区は1トランセクトあたり15.3±2.7(平均±標準偏差、n = 7)であったのに対して、非汚染区は19.2±5.4であった。個体数では、赤土汚染区は1トランセクトあたり42.9±12.1であったのに対して、非汚染区は87.1±37.1であった。 酸性土壌である赤土(国頭マージ)が海水の酸性度に与える影響をpH測定器を用いて調べた。赤土なし海水(コントロール海水)、赤土50mg/L;添加海水、赤土200mg/L;添加海水のpHを、0時間後、2時間後、3日後、7日後に測定した。実験開始直後のpHはコントロール海水で8.1、赤土50mg/L;添加海水で8.09、赤土200mg/L;添加海水で8.08であったのに対して、7日後にはそれぞれ8.1、8.08、8.04となった。したがって、赤土の添加量が多いほど海水は酸性化することがわかった。 期間全体を通して、赤土汚染海域では魚類が少ないこと、着底仔魚は赤土汚染海水に対して忌避行動を示すこと、また赤土汚染は嗅覚による着底場認識能に負の影響を及ぼすことが明らかとなり、その要因の一つとして赤土による海水の酸性化が考えられた。以上より、本研究によって赤土による水質汚染が魚類の着底場選択に与える影響を具体的に評価することができた。
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