研究課題/領域番号 |
24780189
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
堀 美菜 高知大学, 教育研究部総合科学系, 講師 (60582476)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小規模漁業 / 水産物流通 / 仲買業者 / 資源管理 / カンボジア / タイ / フィリピン / トンレサープ湖 |
研究実績の概要 |
東南アジアの漁業者の多くは、ある特定の仲買業者から金銭や漁具の貸付を受け、その仲買業者に独占的に漁獲物を販売している。密接な漁業者と仲買業者の関係は、漁業者が貧困から抜け出せない原因の一つとして挙げられているが、その関わりは一様ではない。本研究では、当該地域における有効な資源管理方策の確立に向け、カンボジア、タイ、フィリピンを事例に、漁業者と仲買業者の関わりを明らかにすることを目的としている。
本年度は主に現地調査が遅れていたフィリピンでの調査を行った。3月にアルバイ州、タバコ市及びサンミゲル島での現地調査を行い、行政官、研究者、仲買業者、及び漁業者への聞き取り調査を行った。同地域では仲買業者による漁業者への貸付や氷の提供などが一般的に行われているが、近年、ウニの流通システムにおいて変化が確認された。1990年代後半より、漁業者によって漁獲されたウニは、地域在住の仲買業者によって買い取られ、マニラのレストランなどへクーラーボックスに氷詰で出荷されていた。2013年に冷凍設備への投資者が出現したことから、従来の仲買業者は収集係として雇用され、流動的であったウニの買取価格は固定された。また、長期保存が可能となったことから、今までとは異なる出荷先に一度に大量に出荷する形態となった。このような変化は、従来使用していなかった他島、他地域の漁場への漁業者の進出を促し、進出先で地域住民と資源の利用や管理をめぐる軋轢を引き起こした。 カンボジアについては、昨年度より引き続き、漁業制度改革に伴う漁業法や漁具漁法の把握を行った。タイについては、昨年度以前に収集したデータの整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天候などの影響で、やや遅れていたフィリピンでの現地調査が実施出来た。また、フィリピンでの事例研究は、漁業者と仲買業者の関わりに加え、流通への新規参入や漁場利用、漁業管理との関わりも明らかに出来る可能性を見出した。しかし、現段階での資源や漁場を巡る軋轢の発生は、研究計画段階では想定出来なかったこと、またこれらの問題が現地で散発的に起きていることから、状況を把握するための工夫が必要であり、現地カウンターパートとの連携が欠かせない。
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今後の研究の推進方策 |
カンボジアでは今後、小規模漁業における違法漁具の取締が強化されることが、水産局員への聞き取り調査によりわかっている。この違法漁具には、厳密には中規模漁具に分類されるものの慣習的に小規模漁具として利用が認められてきたものが含まれており、これらの漁具の規制は、高価格で取引される魚種の漁獲量に影響を与える可能性がある。しかし、規制時期、流通量や価格にどのような影響が出るかは現時点では不明であり、漁具漁法などの基礎情報の収集に加え、継続的に現地調査を実施し事実関係の把握に努める必要がある。 現地調査の実施にあたり、現地での状況や協力体制などを踏まえ、一部調査方法を量的調査から質的調査に変更している。そのため、とりまとめ時に3地域を直接比較出来ない項目が出てくることが予想される。現行の漁業制度や漁業管理の仕組み、地域における漁業管理主体などの周辺情報を合わせて収集し、各地域の現状に即した分析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査方法の一部変更に伴い、調査員への謝金の支払い額が予定から変更となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度実施したフィリピン調査で不足しているデータ収集のための旅費、研究協力者にデータ収集を依頼する際の謝金として使用予定である。
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