本年度の研究は、まず、レーザーマイクロダイセクションを用いて、無顎類スナヤツメアンモシーテス幼生の表皮から種々の細胞を回収するための最適条件を探索することから始めた。まず、凍結切片について、ドライアイアスおよび冷却アセトンを用いた作製法を比較した。その結果、後者の凍結切片が染色ムラなどが生じず、良好であることがわかった。次にHE染色やギムザ染色など、種々の染色方法および染色時間などの条件を検討したところ、Diff-Quick染色を用いた場合に最も効率良く細胞が回収されることが判明した。 上記の切片作製法および染色法を施したスナヤツメ皮膚凍結切片から、レーザーマイクロダイセクションを用いて、大型で識別が容易なSkein細胞およびその他の表皮構成細胞を別々に回収した。Skein細胞については約5000個を、その他の細胞については同程度の面積を回収し、RNAを抽出したところ、約1マイクログラムのRNAの抽出に成功した。一部を逆転写し、ハウスキーピング遺伝子(βアクチン)に特異的なプライマーでPCRを行ったところ、予想サイズにバンドが検出されたことから、RNAの回収には問題がないことが示された。 次に得られたSkein細胞由来RNAおよびその他表皮細胞由来RNAを次世代シークエンサーに供し、それぞれに発現している遺伝子を網羅的に解析した。現在、Skein細胞に特異的に発現している遺伝子、あるいは同細胞において有意に発現量が多い遺伝子の抽出作業を行っている。
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