研究課題/領域番号 |
24780196
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
長谷川 功 独立行政法人水産総合研究センター, 北海道区水産研究所, 研究員 (00603325)
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キーワード | 外来サケ科魚類 / 種間関係 / 種間競争 / 交雑 |
研究概要 |
同所的な生物との種間関係は外来種個体群の定着や存続に強く影響する。ただし、種間関係に関する研究例のほとんどは外来種-在来種間の組み合わせで行われており、外来種間の種間関係に関する研究例は極端に少ない。しかし、複数の外来種が、同一地域に侵入した経緯があったり、同所的に生息している事例が多数あるため、外来種個体群の定着や存続を理解するうえで、外来種間の種間関係を考慮することも必要であろう。 北海道石狩川支流千歳川水系では、およそ100年前に行われていた放流事業と、また、近隣の飼育施設からの逸出にもよって1990年代には北米原産のサケ科魚類ニジマスが広域で確認されていた。しかし、当該年度に行った魚類相調査では、ヨーロッパ原産のサケ科魚類ブラウントラウトが広域で確認され、ニジマスの分布は堰堤上流部など人の手を介さないとブラウントラウトが侵入できない場所及びその周辺に限定されていた。 千歳川水系在来の河川棲サケ科魚類にはヤマメとイワナがいる。ヤマメに対しては微生息空間の選好性が異なること、イワナに対しては種間競争において優位であること等から、これら2種の生息下でもニジマスは定着できると考えられている。一方、千歳川でのニジマスとブラウントラウトの種間関係については知見が乏しいが、ブラウントラウトと置き換わるようにニジマスがいなくなったこと、ただし、ブラウントラウトが侵入できない場所では残存していることから、ニジマスの分布域縮小にはブラウントラウトとの種間関係が寄与している可能性がある。なお、上述した内容はすでにAquatic Invasions誌の電子版で公開されている。 また、ブラウントラウトと日本在来のイワナとの交雑魚を全国規模で探索した。その結果、北海道渡島半島の知内川、栃木県中禅寺湖の流入河川、岐阜県小鳥川で交雑魚が見つかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究課題開始当初は、北海道尻別川水系で野外調査を計画していたが、フィールド探索が上手くいかなかった。そこで、当該年度は調査地を千歳川水系に変更し、また過去のニジマスとブラウントラウトの分布状況を記した文献を入手できたことで、両種の分布の変遷を記載した論文をまとめることができた。この論文は、今後両種の種間関係を議論するうえで基盤となる内容であり、当該研究課題で目指していた主要成果の一つを得ることができた。 また、課題実施途中から、研究内容に追加したブラウントラウトとイワナの交雑魚探索も順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、千歳川水系でのニジマスからブラウントラウトへの分布の置き換わりに両種間の種間競争が影響していることが示唆された。そこで、野外操作実験により両種間の種間競争について検証する。それぞれの単独区と両種の混成区を設け、単独区と混成区で各種の成長率を比較することで種間競争の影響を評価する予定である。
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