海洋環境の変動により海藻養殖産業は逼迫した状態にある。本研究は,地域環境に対応し,地域の未利用海藻資源を利活用するために,山口県内におけるアマノリ類を中心とした資源の探索と保存株の確立を行った。平成27年3月31日現在,山口県内94地点においてアマノリ類の生育調査を行い,県内68地点のアマノリ類を収集できた。これらのうち,アマノリ類がまとまって生育する瀬戸内海側18地点,日本海側11地点の計29地点の約350サンプルについてDNAを抽出し,ミトコンドリア遺伝子領域を利用したPCR-RFLP法によるアマノリ類の種判別を行った。 その結果,瀬戸内海側ではマルバアマノリ(Pyropia suborbiculata),スサビノリ(Py. yezoensis),アサクサノリ(Py. tenera),ソメワケアマノリ(Py. katadae),カイガラアマノリ(Py. tenuipedalis),ヤブレアマノリ(Py. lacerata),ウタスツノリ(Py. kinositae)が生育していた。また,日本海側では,ツクシアマノリ(Porphyra yamadae),オニアマノリ(Py. dentata),マルバアマノリが生育していた。瀬戸内海側では絶滅危惧I類のアサクサノリやカイガラアマノリの新産地を発見することができた。ヤブレアマノリやウタスツノリは瀬戸内海で初めて確認され,マルバアマノリが瀬戸内海や日本海側の多くの地点から採集された。さらに,日本海側においては,秋季から冬季にかけて同所的に生育するアマノリ類の種類が変化していることも示唆された。県内に分布するアマノリ類のうち,一部の希少種および有望種において保存株を確立した。 一方で,PCR-RFLP法による種判別が困難な葉状体も確認され,形態学的・分子系統学的研究によるアマノリ類の多様性の把握と種判別技術の高度化が課題となった。
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