研究課題/領域番号 |
24780200
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
前田 健 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, 研究員 (20572829)
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キーワード | ハゼ / 分類 / 生活史 / 系統 / 仔魚 / 耳石 / 新種記載 / 両側回遊 |
研究概要 |
1. 分類・系統:前年度に沖縄島で採集した未記載種を新種Stiphodon niraikanaiensis(新標準和名ニライカナイボウズハゼ)として記載し、また中国固有と考えられていたStiphodon multisquamus(新標準和名トラフボウズハゼ)の日本からの初記録を報告した。インドネシア産のナンヨウボウズハゼ属の標本を調査し、そのエリアに少なくとも3種が分布することを明らかにし、そのうちの1種を新種Stiphodon maculidorsalisとして記載した。沖縄島において、日本未記録種を含む重要なサンプルを採集した。また、自ら採集した標本、博物館等から借用した標本の調査に加え、ドイツとフランスの博物館を訪問し、所蔵標本の調査を行うなど、標本の観察、計測を進めている。さらに系統および集団構造の解析のために、ボウズハゼ亜科48個体のミトコンドリアDNAの全塩基配列を決定した。 2. 生活史:前年度から継続して毎月の定量観測調査を行い、沖縄島におけるボウズハゼ仔魚の河川加入時期をほぼ特定できた。また、仔魚の採集を行い、日齢査定のための耳石サンプルを採取した。仔魚の形態変化と行動を明らかにするために、ナンヨウボウズハゼとルリボウズハゼの卵塊を採集し、仔魚を飼育したが、着底まで育てることができなかった。 3. 成果の公表:ボウズハゼ亜科の分類と生活史に関する論文3報を公表し、国内外の学会において3回の口頭発表を行った。このうち新種ニライカナイボウズハゼの記載論文に関して所属機関のウェブサイトにて記事を発表し、話題となった。また愛知県の碧南海浜水族館で開催された「ハゼの魅力展」においてヒスイボウズハゼに関する展示協力を行い、関連イベントで市民向けの講演を行った。3月に刊行された稚魚図鑑において、ナンヨウボウズハゼを含むハゼ類51種の原稿を担当した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展し、一部は予想以上の成果を挙げることができたが、仔魚の飼育については本年度も成功させることができなかった。これは初期餌料として培養していた極小ワムシProales similisを十分に増やすことができなかったことが原因の一つと考えられた。系統に関しては、ミトコンドリアDNAの部分塩基配列を用いる計画であったが、より精度の高い全塩基配列を用いる方法に変更した。
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今後の研究の推進方策 |
ボウズハゼの加入時期の調査、仔魚の採集に関しては、本年度末までに十分なデータ、サンプルが得られたので、次年度は調査を継続せず、データ、サンプルの解析を行う。分類に関しては、データの更なる充実を図り、また、これまで得られたデータのとりまとめ、論文執筆を行う。系統の研究は、サンプルを大幅に追加して解析を行う計画であり、シークエンスを進めつつある。仔魚の飼育に関しては、本年度後半に、有用な初期餌料と考えられる極小ワムシProales similisの大量培養を試みたが、有効な改善方法を見出すことができなかった。初期餌料の供給の目途がつけば次年度も飼育を試みたいと考えているが、困難な場合は他の項目の研究を優先する。これまでの研究を通して、フィリピンにおける情報の少なさが問題であることが明らかになったため、次年度、フィリピンにおける採集調査を計画している。本年度3月にフィリピンを訪問して現地の研究者らと共同研究のためのミーティングを行った。現在採集調査および標本輸入のための許可申請に向けて準備を進めている。
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