ボウズハゼ亜科の分類について、前年度まで主に琉球列島および東南アジアのナンヨウボウズハゼ属について研究を進め、2新種を記載するなどの成果を挙げてきた。最終年度は、採集標本および借用標本の観察を継続し、またオランダのNaturalis Biodiversity Centerにおいてタイプ標本の観察を行い、ナンヨウボウズハゼ属の研究をさらに進めた。南シナ海西部の本属の分類の再検討に関する論文を投稿し、印刷中である。また、フィリピンのナンヨウボウズハゼ属についても論文を執筆中である。さらに、ボウズハゼ属やヨロイボウズハゼ属についても研究を行い、ボウズハゼ属のSicyopterus longifilisとS. brevisが同種であることを明らかにするなどの成果を得た。本種は日本からは未記録であるが、沖縄島から標本を得たため、分類の見直しと合わせて報告予定である。これらボウズハゼ亜科の分類や分布に関して得られた成果を取りまとめ、インド太平洋のボウズハゼ亜科に関する本の原稿を執筆し、現在編集中となっている。 前年度までの48個体に加え、新たにボウズハゼ亜科59個体のミトコンドリアDNA全塩基配列を決定した。これにより、ナンヨウボウズハゼ属14種の系統関係が解明され、また、トラフボウズハゼは沖縄、ベトナム、マレーシアの地域間で遺伝的な差異がないこと、色彩が完全に異なるヨロイボウズハゼ属3タイプは同種の色彩変異であることなどが明らかになった。 前年度までに得られた生活史に関するデータの取りまとめを行い、仔魚の出現に関する論文の公表、およびボウズハゼ亜科を含む河川性ハゼ亜目の生活史に関して5件の口頭発表を行った。ボウズハゼ亜科は典型的な分散型の初期生活史を持ち、仔魚の行動や特性がその分散と関わっていることが示唆される。これらの成果を魚類の初期生活史に関する本の1章にまとめた(印刷中)。
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