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2012 年度 実施状況報告書

魚類における複合糖鎖および関連酵素の生理機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 24780204
研究種目

若手研究(B)

研究機関鹿児島大学

研究代表者

塩崎 一弘  鹿児島大学, 水産学部, 助教 (70390896)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード糖鎖
研究概要

魚類におけるシアル酸、およびシアル酸水解酵素であるシアリダーゼの研究はこれまでほとんど行われていない。本研究では魚類におけるシアリダーゼの機能を明らかにすることを目的として、当該年度では以下の項目について近交系メダカHd-rRを用いて検討を行った。
①メダカシアリダーゼのクローニングおよび性状解析…メダカシアリダーゼneu1、neu2、neu3a、neu3b、neu4のうち、クローニングが終了しているneu3a、neu3b以外の遺伝子についてin silicoおよび遺伝子クローニングを行った。ゲノム解析の結果、メダカにはneu2遺伝子は存在せず、neu1およびneu4遺伝子はそれぞれ一つずつ存在することが示唆された。そこで遺伝子クローニングを試みたところ、まずneu4遺伝子のクローニングに成功した。この遺伝子については遺伝子データベースにAccession No:AB774292.1として登録された。また、neu1遺伝子についてはクローニングを継続して行っている。neu4については性状解析も終えており、pH4.6を最適として糖タンパクを基質とすることがあることが分かった。これは糖脂質と糖タンパクの両方を基質とするヒトNEU4とは若干性質が異なっていた。
②メダカ発生段階におけるシアリダーゼ、および糖鎖の発現変化解析…近交系Hd-rRメダカの発生過程におけるシアリダーゼ遺伝子の発現変化を解析したところ、neu3aは受精直後に発現が上昇し、未分化な状態で機能することが推察された。一方、ほかのシアリダーゼは5dpfから8dpfで発現が上昇し、器官形成に関与することが考えられた。
③培養細胞を用いたシアリダーゼの機能解析…神経細胞にneu3a遺伝子を導入したところ、神経突起の進展が認められた。この事から、neu3aは神経細胞の分化に関与し、ネットワーク形成に関与することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

平成24年度は、1)メダカシアリダーゼのクローニングおよび性状解析、2)メダカ発生段階におけるシアリダーゼの発現変化、3)糖鎖の発現変化解析、培養細胞を用いたシアリダーゼの機能解析、の3つの項目について研究を計画していた。1)については未同定の遺伝子のクローニングおよびデータベース登録、性状解析を完了した。2)については、メダカ胚発生における4つのシアリダーゼ遺伝子(neu1、neu3a、neu3b、neu4)の発現変化について解析を行い、その変動を明らかにするなど順調に計画を達成できた。また、3)については神経細胞にシアリダーゼ遺伝子を導入し、神経突起を進展させるシアリダーゼがneu3aであること、またその機能については哺乳類まで広く保存されていることを明らかにすることができた。
ここまでの研究結果についてまとめたものを、英文雑誌Biochimie誌に投稿し、2012年に受理された(Shiozaki, K., Takeshita, K., Ikeda, M., Ikeda, A., Harasaki, Y., Komatsu, M., Yamada, S., Yamaguchi, K., Miyaagi, T., Molecular cloning and biochemical characterization of two novel Neu3 sialidases, neu3a and neu3b, from medaka (Oryzias latipes). Biochimie, 95, 280-289, 2013)。以上の理由から、本課題は現在まで研究の目的について、当初の計画以上に進展していると評価を行った。

今後の研究の推進方策

次年度では遺伝子改変メダカを作成し、数年度に渡り解析を行う予定である。具体的には、以下の計画に従ってメダカシアリダーゼの機能解析を試みる。
a.シアリダーゼトランスジェニックメダカの作製…メダカシアリダーゼの機能をin vivoで解析するため、Hd-rRメダカの受精卵に各シアリダーゼ遺伝子をマイクロインジェクション法により導入し、シアリダーゼ遺伝子のトランスジェニックメダカを作製する。さらに、シアリダーゼの発現解析を行うため、シアリダーゼ遺伝子の5’上流域をGFPなどの蛍光タンパクに繋いだDNAを作製し、メダカ受精卵に注入した発現解析用トランスジェニックメダカも作製する。
b.シアリダーゼトランスジェニックメダカの解析…シアリダーゼトランスジェニックメダカを観察し、形態や行動、発生などの変化を観察する。組織の評価は切片を作製し、HE染色を行う。また、各組織における糖鎖の変化を評価するために、薄層クロマトグラフィーやレクチンブロット解析を行う。シアリダーゼのプロモーター領域を遺伝子導入したトランスジェニックメダカにおいては、卵における発生段階、および成魚におけるストレス負荷試験などによるGFP発現誘導を評価し、シアリダーゼの機能解析を試みる。
c.シアリダーゼノックダウンメダカの作製および解析…メダカにシアリダーゼを標的とするモルフォリノをインジェクションし、発生の変化を観察することで、シアリダーゼの機能解析を行う。得られた結果は、シアリダーゼトランスジェニックメダカで見られたフェノタイプと併せて考察し、シアリダーゼの生理機能の評価を行う。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究費(直接経費)は、50万円以上の設備備品購入の予定は無く、40万円を実験器具、試薬類などの消耗品、10万円を研究成果を学会発表するための旅費として計画している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Molecular cloning and biochemical characterization of two novel Neu3 sialidases, neu3a and neu3b, from medaka (Oryzias latipes).2013

    • 著者名/発表者名
      Shiozaki, K., Takeshita, K., Ikeda, M., Ikeda, A., Harasaki, Y., Komatsu, M., Yamada, S., Yamaguchi, K., Miyaagi, T.,
    • 雑誌名

      Biochimie

      巻: 95 ページ: 280-289

    • DOI

      10.1016/j.biochi.2012.09.026

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Susceptibility to colitis-associated colon carcinogenesis in mice lacking plasma membrane-associated sialidase.2012

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi, K., Shiozaki, K., Moriya, S., Koseki K., Wada T., Tateno, H., Sato, I., Asano, M., Iwakura, Y., Miyagi, T.,
    • 雑誌名

      PLos One

      巻: 7 ページ: e41132

    • DOI

      doi: 10.1371/journal.pone.0041132

    • 査読あり
  • [学会発表] メダカシアリダーゼneu3a、neu3bの性状解析とその生理的役割の検討2012

    • 著者名/発表者名
      塩崎一弘, 竹下一輝, 池田麻美, 原崎裕介, 小松正治, 山田章二, 宮城妙子
    • 学会等名
      第31回日本糖質学会年会
    • 発表場所
      鹿児島
    • 年月日
      20120917-20120920
  • [学会発表] メダカシアリダーゼneu3a、neu3bの神経細胞分化に与える影響2012

    • 著者名/発表者名
      竹下一輝, 池田麻美, 原崎裕介, 松下直人, 小松正治, 山田章二, 宮城妙子, 塩崎一弘
    • 学会等名
      平成24年度日本水産学会秋季大会
    • 発表場所
      下関
    • 年月日
      20120914-20120917

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公開日: 2014-07-24  

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