研究課題
平成24年度に新規メダカシアリダーゼneu4のクローニングに成功していたが、その酵素学的性状や機能についてはわかっていなかった。そこで平成25年度ではneu4の組み換えタンパク質を作製し、その酵素学的性状解析を行った。その結果、酵素活性の至適pHを4.7とする点はヒトNEU4と同じであったが、基質特異性(シアリルオリゴ糖を良い基質とする一方で糖脂質には作用しない)はヒトNEU4と大きく異なっていることが明らかとなった。さらに既に報告されているゼブラフィッシュneu4と比較したところ、魚種間においてもその酵素学的性状が一様では無いことがわかった。これらの結果から、先に報告したメダカシアリダーゼneu3aとは異なり、neu4は各動物間で独自に進化した機能の異なる糖鎖分解酵素であることが強く示唆された。またその細胞内局在を解析したところ、そのほとんどがリソソームにあることが明らかとなった。リソソームには別のシアリダーゼであるneu1の存在が予想されることから、メダカでは2種のシアリダーゼにより、リソソームにおける異化分解が制御されていることが示唆された。また、neu4は中性pHでもその活性を維持していたことから、その意義について検討したところ、10%以下のわずかなポピュレーションのneu4が細胞膜にも局在していることが免疫染色法により明らかとなった。さらにneu4はTritonx-100には難溶である事も判明した。これらの性状はヒトNEU1と非常に類似しており、今後のメダカneu4の生理機能解析の参考になると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
メダカにおけるすべてのシアリダーゼ遺伝子のクローニングを終了しており、その酵素学的性状解析についてもneu1を除いてほぼ明らかにした。遺伝子組み換え細胞を用いたシアリダーゼの生理機能解析の関するデータも集まってきており、遺伝子組み換えメダカを作製するために必要なin vitroでのデータも十分である。
申請書に記載したように、今年度以降は遺伝子組み換えメダカを作製しその解析により魚類シアリダーゼの生理機能を明らかにしていく予定である。具体的にはシアリダーゼの遺伝子上流部分にGFPベクターをつないだプロモーターアッセイ、およびモルフォリノを用いたノックダウンの実験である。研究進行にあたり重要になるのは、複数存在するシアリダーゼのうち、どのシアリダーゼをターゲットにして組み換えメダカを作製するかということである。ノックアウトマウスのフェノタイプから予想されるように、場合によってはダブル、トリプルノックダウンを作製する必要が考えられる。またTALENなどによるノックアウト動物の作製も視野に入れている。
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Fish Physiol Biochem
巻: 40 ページ: 1461-1472
10.1007/s10695-014-9940-9