研究課題/領域番号 |
24780206
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研究機関 | 大阪府立公衆衛生研究所 |
研究代表者 |
坂田 淳子 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 研究員 (30455547)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 腸炎ビブリオ / イムノクロマト法 / 品質管理 |
研究概要 |
本研究の目的は、腸炎ビブリオの迅速な現場即応型の検査法(イムノクロマト法;ICA法)の開発である。すでに申請者らは,腸炎ビブリオに高い特異性を示すモノクローナル抗体(MAb)(MAb-VP34と命名)を保有しており、さらにこのMAbはATP 合成酵素δサブユニットを認識していることが判明している。 本年度は、ICA法を開発するため、大腸菌で発現誘導させたリコンビナントATP合成酵素のδサブユニットを免疫抗原に用いて、本抗原をMAb-VP34と挟みこめるMAbを複数作出した。 作出したMAbのうち「MAb-VP16」と命名したMAbと、MAb-VP34とを組み合わせて構築したICA法は、特異性を検討した結果、試験に供した腸炎ビブリオ全てとV. natriegensに陽性反応を示し、腸炎ビブリオ以外の菌種に対しては,V. natriegensを除いて,陰性反応を示した。本ICA法では、V. natriegensに対して交叉反応を示したため、食品の増菌培養液からの腸炎ビブリオの検出に応用するのは難しい。しかし、V. natriegensはTCBS寒天培地上で白糖分解性の黄色コロニーを形成し、緑色コロニーを形成する腸炎ビブリオとは容易に鑑別可能であることから、本法は分離平板上の腸炎ビブリオのコロニーの同定に応用可能であると考えられた。 分離平板上の腸炎ビブリオのコロニーを同定するのには、生化学的性状試験による従来法では3日かかるが、本ICA法による同定にかかる時間は30分程度で、特別な機器も必要としないことから、本ICA法は腸炎ビブリオの迅速・簡便な同定法として有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、MAb-VP34を用いて、サンドイッチ検出系であるICA法を開発するために,ATP合成酵素をこのMAb-VP34と挟みこめるもう一つのMAbを作出することを目的に研究を行った。 その結果、大腸菌で発現誘導させたリコンビナントATP合成酵素のδサブユニットを免疫抗原に用いて、本抗原をMAb-VP34と挟みこめるMAbを複数作出した。そのうちの1つのMAb(MAb-VP16)を用いて作製したICA法では、分離平板上の腸炎ビブリオのコロニーを簡便に同定することが可能であった。 また、現在検討を行っている「MAb-VP109と命名したMAbとMAb-VP34を用いて作製したICA法」では、検討している範囲で腸炎ビブリオに特異的であることが判明しており、平成25年度はこれを用いて、食品増菌培養液からの腸炎ビブリオの検出について検討を行う予定である。 本年度に予定していたMAbのエピトープ解析は未実施だが、その他は研究計画どおりに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在検討を行っている「MAb-VP109とMAb-VP34を用いて作製したICA法」では、検討している範囲で腸炎ビブリオに特異的であることが判明しており、平成25年度はこれを用いて、食品増菌培養液からの腸炎ビブリオの検出について検討を行う予定である。 しかし、現在構築中のこのICA法の感度は10の7乗CFU/ml程度であり、食品の増菌培養液から腸炎ビブリオを検出するためには、10の6乗CFU/ml程度の感度が要求されることから、課題を達成するためには現在検討中の系よりも少なくとも10倍以上系の検出感度を上げなければならない。そのため、研究計画を一部変更し、MAbを標識する粒子に、金コロイドだけでなく、金コロイドよりも10倍程度粒径が大きい着色ラテックス粒子を加え、系の感度上昇を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
MAbのエピトープ解析は、本年度での実施を計画していたが、未実施である。そのため、エピトープ解析分の費用を平成25年度に繰り越し、平成25年度にエピトープ解析を実施する。 その他は、当初の研究費の使用計画に大きな変更はない。
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