研究課題/領域番号 |
24780209
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
成田 拓未 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50614260)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | りんご / 輸出 / マーケティング / 中国 / 台湾 / 香港 / 原子力発電所事故 |
研究概要 |
本研究の第1年度目にあたる平成24年度においては、①りんご産地の輸出向けりんご出荷農協・企業へのヒアリング調査、②国内果実輸出商社へのヒアリング調査、③海外予備調査、④統計文献資料収集の実施を計画した。実際には、この間の諸般の事情を考慮したうえ、④を中心的に実施し、その結果として、以下のことが明らかとなった。 わが国りんご輸出の近年の状況は、平成23年3月11日(3.11)に発生した東日本大震災及び福島原子力発電所事故以降、減少の一途をたどっている。一部には、こうした傾向の要因として福島原子力発電所事故の影響を強調する向きもある。しかしながら、こうした認識は以下の理由により、一面的であると言わざるをえない。 第1に、2008年の金融危機等の発生等をきっかけとして進んできた円高の影響を受け、3.11以前からすでにわが国りんご輸出量は減少傾向を示していたことである。 第2に、わが国りんご輸出量の90%を占めるとされる青森県産りんごの生産量は、3.11以降の平成23年産、同24年産において著しい減産となったことである。このことは、日本国内におけるりんご市場の需給を逼迫させることから、海外輸出に仕向けられるりんごは必然的に減少せざるを得ない。 上記2点を考慮すると、現状では、わが国りんご輸出量減少の要因は、福島原子力発電所事故の影響より、円高と不作による影響をより強く受けているものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の第1年度目にあたる平成24年度においては、①りんご産地の輸出向けりんご出荷農協・企業へのヒアリング調査、②国内果実輸出商社へのヒアリング調査、③海外予備調査、④統計文献資料収集の実施を計画した。うち、③については、平成24年9月を頂点に緊張の高まった尖閣諸島問題の影響を考慮し、実施を見合わせざるを得なかった。また、上記の様なりんご輸出量の大幅な減少局面を考慮し、その要因分析のための資料収集を優先したことから、①②については実施を平成25年度以降に延期することとした。
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今後の研究の推進方策 |
りんご輸出を取り巻く環境は依然として流動的である。 平成24年12月に発足した安倍政権は、引き続き農産物の輸出促進を農政の主要な政策課題の一つとして掲げている。安倍氏は、第1期政権時代に、農産物・食品輸出額1兆円の目標を掲げ、その目標が今日まで続いている。その前政権小泉氏とともに、歴代の内閣総理大臣の中でも農産物輸出を特に強調した人物の1人となっている。更には、TPP議論との関連もあって、わが国農業の競争力向上の一つのメルクマールとしても輸出が位置づけられている。こうしたことから、農産物輸出促進へ向けた政策的な取り組みは、一層活発化するものと考えられる。 更には、いわゆる“アベノミクス”の影響により、円安が急速に進んでいる。こうした傾向が、一定期間継続した場合には、わが国農産物輸出にとっては追い風となるものと考えられる。 以上のように、安倍政権発足以降、わが国農産物輸出にとっての好条件が相次いで生まれてきている。こうした状況下においてもりんご輸出が伸び悩むか否か、このことによって原子力発電所事故による農産物輸出への影響も明らかになってくるものと考えられる。これらを踏まえ、輸出当事者、海外消費者への調査項目の吟味を進めることとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、前年度に積み残した、①りんご産地の輸出向けりんご出荷農協・企業へのヒアリング調査、②国内果実輸出商社へのヒアリング調査、③海外予備調査を実施し、アンケート調査実施へ向けた作業を中心に進めることとする。 また、上記「今後の研究の推進方策」に記載のように、農産物輸出をめぐる環境は流動的であるので、臨機応変に調査計画を微修正するなどし、タイムリーな研究成果を上げるように配慮する。
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