研究課題/領域番号 |
24780209
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
成田 拓未 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50614260)
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キーワード | りんご / 輸出 / マーケティング / 中国 / 台湾 / 原子力発電所事故 / 国際競争 |
研究概要 |
本研究の第2年度目にあたる平成25年度は、現地調査の面では、1)原子力発電所事故に伴う輸出向けりんごの風評被害対策の実態調査、2)輸出向けりんご出荷農協へのヒアリング調査、3)りんごジュースの海外販路構築の実態調査、等を実施した。 1)においては、りんご産地における地方公共団体が、機動的にりんご園地およびりんご果実の放射線量・放射能量調査を実施し、調査結果の公表、調査証明書の公布(りんご輸出関連業者の利用に供する)、輸出先(台湾)政府・輸入関連主体への調査結果の積極的な開示により、風評を克服したことを明らかにした。 2)においては、従来単協が個々に対応する場合の多かったりんご輸出において、農協系統が県単位で輸出戦略を構築する萌芽が見られることが明らかとなった。このことは、農産物流通の小売段階における量販店のシェア拡大に対して、単協単位では対応しきれない大口の取引に農協系統が窓口となって県単位でロットの形成に取り組んできた経験がベースになっている。こうした動きが、今後のりんご輸出にいかなる影響をおよぼすのか、継続して観察することが必要である。 3)においては、りんごジュースの輸出について、品質を高く維持するとともにその第3者による証明を得つつ、海外で実施される見本市での出品と試食を通じて中国の高級量販店のバイヤーの支持を得て、販路を拡大しつつあること、更に、りんごジュースによって構築した販路によって、りんごの生果輸出も軌道にのりつつあることも明らかとなった。 また、前年度および今年度の研究成果を踏まえ、書籍、雑誌、日本協同組合学会、日本国際地域開発学会において、原子力発電所事故以降のりんご輸出量減少の要因が風評被害ではなく円高と不作にあること、風評は早期に克服されていること、今後は中国を中心とする海外の有力りんご輸出国との競合について注視する必要があること等について論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の進捗状況に比して研究成果の公表が順調であるため。
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今後の研究の推進方策 |
この間の研究により、中国産りんごの品質向上が、日本産りんごの海外展開にとって重要な制約要因となりうることが明らかとなりつつある。このことも念頭において、当初の研究計画をベースに適宜計画を調整し、世界のりんご市場における日本産りんごの位置、海外産りんごとの競合の実態についても掘り下げることにより、より確かな日本産りんごのターゲットマーケティングのあり方について検討していくこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、同年9月を頂点に緊張の高まった尖閣諸島問題の影響や、急激な円高によるりんご輸出量の大幅な減少局面等、社会経済情勢の著しい変動を考慮し実施を見送らざるを得なかった調査計画があったことから、その影響による次年度使用額が生じている。 補助事業期間の1年延長も視野に適宜計画を見直し、確実に研究成果をあげることとする。
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