研究課題/領域番号 |
24780211
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
松下 京平 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (20552962)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 地域ネットワーク / 協働型自然資源管理 |
研究概要 |
本研究は、広島県北広島町で展開される協働型自然資源管理を例に、農村地域において形成される地域ネットワーク構造と当該地域の資源管理形態の関連性を実証的に解明することを目的とする。そこで研究実施計画で定める通り、本年度は①北広島町内で実施されている資源管理の実態把握、②資源管理に関わる主体ネットワークの量的・質的情報の指標化、の二つを実施した。 ①については、現地調査および研究協力者への聞き取りを実施し、「誰が、どのような資源管理活動に、どのように関与し、その動機は何か」を把握した。具体的には、生態学的に重要な場所であると同時に、行政、地域住民、研究者、ボランティアなど多様な主体がその維持管理に関与する北広島町内の八幡湿原および雲月山草原の二つの資源管理活動を研究事例として取り上げた。自然再生事業の対象地である前者については、協議会資料を収集すると同時に「芸北高原の自然館」に収蔵される郷土資料を収集することで、八幡湿原保全の歴史的変遷を把握した。雲月山草原については白川(2009)の「多様な主体による草地管理恊働体の構築-芸北を例に」のサーベイならびに現地調査を通じて、雲月山草原の伝統的な保全方法が抱える課題および今後の展望を検証した。 ②では、①で得られた知見を基に、八幡地区ならびに雲月地区の地域住民を対象としたアンケート調査をそれぞれ2012年11月から12月にかけて実施した。調査票は主に、各世帯に関する人口動態変数、地域住民間で形成される多様なネットワークの種類および地域資源の保全に対する意識を尋ねる質問項目から構成されている。八幡地区での調査票配布数は144通、回収数は89通であった。雲月地区での調査票配布数は150通、回収数は97通であった。回収した調査票は個人情報保護の観点から厳重管理の下、データの整理・加工を行い、次年度に実施予定の計量経済学的分析の下準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
農村地域における地域ネットワークと当該地域の資源管理形態の関連性を実証的に検討することを目的とする本研究は、第一に当該地域において展開される恊働型自然資源管理の実態把握、第二に恊働型自然資源管理の揺籃期から現在に至るまでのネットワーク構造の変化の過程の観察、第三にネットワーク構造の形態が地域資源の維持管理の効率性向上に及ぼす影響の定量的検証、の3つのプロセスから構成される研究実施計画に従って遂行される。 本年度の進捗状況としては、第一のプロセスおよび第二のプロセスの一部に着手するに至った。具体的には、現地調査ならびに研究協力者への聞き取りを実施し、当該地域において展開される恊働型自然資源管理の代表的な例として、八幡湿原および雲月山草原の資源管理活動を事例として取り上げることとした。これら資源管理活動には地域住民のみならず、行政、研究者、ボランティアなどの多様な主体も関与しており、現地調査ならびに研究協力者への聞き取りを通じて、資源管理計画の立案や活動実施などの局面で各主体が様々な関わり方をしていることが明らかとなった。また、各主体が現在のような形で資源管理に関与するに至った理由を検討するために、既往研究のサーベイならびに郷土資料の収集・整理を行い、それら資源管理の歴史的変遷を一部把握するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度の基礎的調査を踏まえ、北広島町において展開される種々の自然資源管理に関連する地 域ネットワークの構造を把握すると同時に、それが恊働型自然資源管理に及ぼす影響を定量的に検証することとする。具体的には、平成24年度に収集した八幡地区および雲月地区のデータを用いて、地域住民が形成するネットワーク構造と該地域資源(八幡湿原ならびに雲月山草原)の維持管理の関係をコンジョイント分析と呼ばれる環境評価手法の一つを用いて明らかにしていく。また、分析から得られる知見は地域へのフィードバックならびに学会報告などを通じて広く社会に発信することとする。 ただし、上述する分析は資源管理に関わる主体のうち地域住民に焦点を絞ったものである。そのため、次の手順としては、地域住民以外の主体である行政、研究者そしてボランティア団体なども射程に含める研究へと分析枠組みを拡張していく必要がある。そこで次年度は、八幡湿原や雲月山草原の維持管理活動にボランティアが参加する時期を見計らい、ボランティアを対象としたアンケート調査を実施することとする。このとき、芸北地区にとって部外者である研究代表者からのアンケート調査票の配布という形式ではなく、八幡湿原ならびに雲月山草原の双方の資源管理活動に関与している「芸北高原の自然館」に努める研究協力者に協力を依頼し、そこからのアンケート調査票の配布という形でボランティアからの円滑な協力を取り付けられるよう工夫する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、今年度のアンケート調査に協力頂いた地域住民に対する報告会の機会を設けると同時に、学会報告等の形で得られた分析結果を広く社会に発信していく。 次に、地域住民に関する知見との比較という観点から、地域住民以外(次年度はボランティアを予定)へのアンケート調査を実施する。過去の参加データによると、八幡湿原ならびに雲月山草原の保全活動に携わるボランティアの数はおよそ200~300名となる見通しである。そこで、彼ら全員を対象として、郵送によるアンケート調査票の配布ならびに回収を実施する。また、本アンケート調査の結果についても調査に協力頂いたボランティアに対する報告会の機会を設ける。ただし、ボランティアの中には遠方から来ている人も多くいることが予想され、場合によっては分析結果の概要を簡潔に記した報告書を返信する、もしくは分析結果を記載したホームページを作成・公開することも想定している。 最後に、郷土資料や先行研究資料などの基礎文献については今年度と同様次年度も引き続き収集・整理する。
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