研究課題/領域番号 |
24780213
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
齋藤 久光 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (30540984)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 理論分析 / 統計分析 |
研究概要 |
生産性など企業属性の異なる日系食品企業の直接投資の目的と投資先地域の選定方法について明らかにするため,平成24年度は主に理論モデルの構築と統計データの収集・整理を行った. 統計データを整理することで,これまで直接投資の主流とされてきた,現地で生産し日本で販売する開発輸入型の直接投資が減少していることが分かった.一方,現地で生産・販売するタイプの直接投資は増加しており,日系食品企業の直接投資の目的は,近年,大きく変化していることが明らかとなった. そうした背景の下,理論モデルでは生産要素市場と生産財市場の二つの市場に注目し,企業はどのような市場を持つ地域に立地するのかを明らかにした.その結果,既存研究で指摘されているように,原料農産物の価格が低く,加工食品の市場規模が大きい地域に日系食品企業は立地する傾向にあることが分かった. 一方,既存研究とは異なり,企業間の生産性の違いを理論モデルに取り入れることで,生産性の高い企業ほど,生産要素価格が高く,生産財市場の規模が小さい地域にも参入する傾向にあることが示された.この結果は,これまで直接投資を誘致するには条件が悪いとみなされてきた地域でも,生産要素または生産物のいずれかの市場で優位性があれば,多国籍企業は参入することを示唆している.言い換えれば,本研究から,生産性の高い企業に誘致の対象を絞り,いずれかの市場において国際的な優位性を高めることで,これまで直接投資の誘致をあきらめていた地域でも,誘致は可能であるという新たな政策的含意が導かれた. 以上の結果をまとめ,北海道農業経済学会例会にて「企業の異質性と日系食品企業の海外立地選択」というタイトルで,学会報告を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
直接投資の目的に応じて企業の投資先選定方法も異なると考えられるが,既存研究ではその目的が明示的に区別されないまま分析が行われてきた.そこで,本研究では,投資目的に応じた直接投資の立地選択分析を行うことを目的としている. 平成24年度に行った研究では,日系食品企業による直接投資の目的が近年どのように変化してきたかを,統計データの分析から明らかにした.その結果を踏まえ,企業の直接投資先の選択行動を,経済理論を用いて分析した.その際,既存研究ではほとんど考慮されてこなかった企業間の生産性の違いをモデルに導入することで,投資先地域の経済を活性化させるために有効な新たな政策的含意を導き出すことができた. 以上の研究は平成24年度の研究実施計画に沿って行われ,その成果も研究計画において期待されていたものである.したがって,現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究も,研究実施計画に従って実施する.平成24年度に行われた日系食品企業の直接投資に関する理論分析では,重要な新たな政策提言が導かれた.しかしながら,この提言は現段階では理論的に導出された仮説にすぎない.したがって,仮説検定を目的とした実証分析に向け,前年度に引き続き,データ収集と整理を続ける.そうして集められたデータを用いて,仮説の検定を行うとともに,実証分析から得られた定量的な結果をもとに,より具体的な政策提言を導出する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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