研究課題/領域番号 |
24780216
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
佐々木 貴文 鹿児島大学, 水産学部, 助教 (00518954)
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キーワード | 水産業 / 漁業 / 水産加工業 / 学歴 / 学校 / 近代史 / 現代史 / カツオ |
研究概要 |
本研究では、わが国の教育機関が水産業に果たした役割に注目してきた。「戦前」であれば、農商務省の水産政策が教育活動に及ぼした影響などを把握することに努めてきたし、「戦後」であれば、文部省(文部科学省)管轄の水産高校に関して、卒業生の動向に注意をはらって検討を進めてきた。そして、学校の「入口」「出口」と就業先の「入口」の結びつきを社会的評価の観点も踏まえて分析しようとした。また本研究では、既往の研究で得られた手掛かりをもとに、現代にも視野を拡大して、学歴という一つの軸からみえる漁業の姿から、魅力ある漁業の再生に資する要件を表出させたいと考えて研究を進めている。 本年度の研究実績の概要であるけれども、前年度までの歴史的な検討を踏まえながらも、具体的な地域・漁業種・水産加工種類に焦点を当て、現状分析を実施した。すなわち、枕崎市におけるかつお節産業における労働者の学歴と職務の相関関係の分析、さらには、外国人労働力との位置関係などに検討の対象をしぼった。 加えて、長崎市に本社を置く海外まき網漁業会社を対象として、かつお節産業へのカツオの供給実態や、海外まき網漁船の乗組員の職務分担や技能継承といった労働実態、外国人労働力とのすみわけ、学歴と「出世」の関係など、様々な観点から調査・分析を実施した。 この結果、水産加工業においては、学歴と職務との関係には一定の相関が確認できるけれども、漁船漁業においては「縁故」による採用を漁労長が強く望む傾向にあることなどからその相関が弱いことがわかった。また、外国人労働力への依存傾向が強まるなかで、水産加工業では重要な技能は日本人同士による継承関係が残るものの、マルシップ漁船では、幹部職員を除く日本人と外国人船員の間に職務に関する垣根は相当程度低くなっていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、これまでの研究成果でもある「水産業と学歴の近代史-福井県立小浜水産学校における人材養成に注目して-」(漁業経済学会『漁業経済研究』第57巻)や、「わが国の遠洋・沖合漁業を支える静岡県立漁業高等学園の海技士養成」(漁協経営センター『漁業と漁協』Vol.51)といった論稿に続くものをまとめる作業だけではなく、漁村におもむき現地調査を繰り返して実態分析を実施することに注力した。 その調査結果は、2013年10月の地域漁業学会のシンポジウムや、同年12月の日本技術教育学会の冬期研究会で報告するなど、成果の公表を順次おこなった。その結果、多くの研究者から批判や助言を得ることができ、成果の取りまとめ作業に円滑に移行することができている。現在、地域漁業学会のシンポジウムで報告した内容について、論文としてまとめ、学会誌上で発表することを目指している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、本年度実施した現地調査をさらに他漁業種に敷衍させることを目指している。すなわち、山口県や千葉県の沖合底曳き網漁業などを対象にすることを考えている。また、水産加工業についても同様に、塩干物などを加えていきたいと考える。これにより、漁業種・加工業種にみられる横断的な特徴や、固有の特徴を表出させることを目指したい。 研究方法については、本年度を踏襲する。研究計画についての変更はない。
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