平成27年度はまず、前年度に実施した一般消費者対象のWebアンケート調査の結果をもとに有機野菜の購買層の特性を検討して学会発表を行うと共に、報告論文として取りまとめた。有機野菜の日常的購買層は所得や学歴が比較的高く、既婚である傾向があること、生活においては社会や人との関わりを持ち行動的である傾向や食に対する知的関心度が高い傾向が確認された。またSchwartzのBasic Human Valuesを用いた比較では日常的購買層は「博愛」「慈善」といった価値をより重視し、「快楽」「調和」をあまり重視しない傾向が明らかになった。 食材宅配サービス利用者を対象とするアンケート調査結果も含めて有機野菜購買層が重視する価値観を検討したところ、「博愛」「慈善」に加えて「安全」「自主独往」の価値がより重視されることがわかった。これらの結果より有機野菜購買層の多様性が示唆されたため、その多様性の背景を探るためにクラスター分析を行ったところ、購買層が大きく1) 「安全」を最も重視する層、2) 「自主独往」を最も重視する層、3) 「快楽」を最も重視する層、4) いずれの価値も重視しないが、比較的「自己高揚」に属する価値を重視する層に分かれることがわかった。これらの結果より、有機野菜購買層には多様なタイプの人々が含まれると共に、有機野菜の購買動機は複数の価値が関与して複雑に形成されている可能性が示唆された。本分析結果は論文として取りまとめ、学会誌に投稿中である。 さらに、ドイツの有機食品購買層を対象に実施したアンケート調査結果との比較を通して日本の購買層との相違点を明らかにし、その結果を本助成事業の一環として開催した国際シンポジウムにて発表した。ドイツとの比較では、日本の有機野菜購買層は相対的に生活における私的な事項への関心が高く、社会への関心や社会に対する影響力行使への関心が低いことがわかった。
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