集落営農組織における交付金の配分は、生産物とその販売による成果が組織に帰属するか、構成員に帰属するかに密接に関係していた。前者のケースにおいては、農産物生産に伴って国から支払われる交付金も組織の帰属となる。一方後者のケースをみると、支払われる交付金相当額は実質的に構成員のものとなる。前者のケースは転作部門を組織ぐるみの共同作業で行う際に、後者のケースは稲作部門を構成員が個別に作業をする際に、典型的に現れていた。 以上をふまえると、生産物とその販売による成果の帰属形態と農作業形態が集落営農組織における交付金マネジメントのポイントとなり、それは集落営農組織の運営のあり方と深く関わることになる。すなわち、構成員を単なる地権者として位置づけ、農作業は全て組織が行い、販売代金も組織で精算し、その成果も組織に帰属するという「完全協業経営」と、構成員にはできるだけ農作業に出役してもらい、そのインセンティブを保持するために「成果」を構成員に帰属させる「地域巻き込み型経営」のどちらを志向するのかという問題である。 前者であれば、交付金をそのまま組織の収入としてカウントできるメリットがある。しかし長期的には構成員の地域農業への関心を失わせ、組織の後継者が出てこなくなるという「集落営農のジレンマ」が生じる恐れがある。後者であれば、交付金は実質的に組織のものにはならず、組織経営のやりくりが厳しくなるが、構成員の地域農業への関心を保持することができる。以上のどちらを選択するかは、高齢化の進捗、後継者の有無、農外雇用環境といった組織構成員の置かれた状況によって一様ではない。集落営農組織は自らの拠って立つ地域や構成員の状況や取り巻く環境を見極めながら、組織運営のあり方を選択し、それに合わせた交付金マネジメントを行うことが必要である。
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