研究課題/領域番号 |
24780220
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
高山 太輔 明海大学, 経済学部, 講師 (50612743)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 政策評価 / 構造改革特区 / 差分の差推定法 / 傾向スコアマッチング |
研究概要 |
農業の担い手問題に対して、多様な担い手の一部としての企業による農業参入が注目されている。農業への株式会社の参入の是非について多くの議論がなされてきた。株式会社による農業参入に対しては、様々な問題点が挙げられるが、農地利用の観点から遊休農地や耕作放棄地の解消、企業の農業参入による雇用の創出など農業活性化や地域活性化等が期待されるなど、地域にとってのメリットも指摘されている。 本研究では、構造改革特別区域法による「地方公共団体又は農地保有合理化法人による農地又は採草放牧地の特定法人への貸付事業」(以下、農業リース特区)の活用により企業の農業参入があった市町村において、企業参入が地域農業にもたらした影響を明らかにした。具体的には農地利用と地域農業活性化の観点から政策効果の発現が期待される結果変数として、耕作放棄地率、経営耕地面積、販売農家数を取り上げ、特区制度による企業の農業参入の効果を測定した。旧市区町村レベルのパネルデータを作成し、パイプライン比較によりマッチングを行い「差分の差」(Difference in Differences)の推定法を行ったところ、特区認定により企業の農業参入を受け入れた市町村では、耕作放棄地の増加を緩和する効果が観察され、販売農家数や農地の減少を緩和する効果も確認された。したがって、農業リース特区制度は、企業の農業参入を通して、農村地域の維持・活性化をもたらすという政策効果を有していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、耕作放棄地や耕作放棄されるおそれのある農地が相当程度存在する市町村を対象として、農業生産法人以外の法人への農地の貸付を認める「農業リース特区制度」の政策効果を明らかにした。 具体的には、現地調査により政策意図・手法の把握を行うことにより、政策効果や効果の範囲について把握し、地域農業の現状を詳細に記録した農業情報である農林業センサスを利用して、農業集落レベル、市町村レベルでのパネルデータを構築した。政策効果の計測にあたっては、政策効果をより偏りなく推定する方法として提唱され、近年頻繁に利用されている傾向スコアマッチング推定法を用いて推計を行った。 研究成果を日本経済学会2012年度春季大会にて発表した。また、現在、論文を学会誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、2007年度に施行された農地や農業用水路等の資源保全を目的とする地域ぐるみでの共同活動を支援する「農地・水・環境保全向上対策」の政策効果を明らかにする。 具体的には、現地調査により政策意図・手法の把握を行うことにより、政策効果や効果の範囲について把握し、地域農業の現状を詳細に記録した農業情報である農林業センサスを利用して、農業集落レベル、市町村レベルでのパネルデータを構築する。政策効果の計測にあたっては、政策効果をより偏りなく推定する方法として提唱され、近年頻繁に利用されている傾向スコアマッチングおよび差分の差(Difference in Differences:DID)推定法を用いることにより「農地・水・環境保全向上対策」による農地利用の改善や農村地域活性化の効果を推定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
所属研究機関は私立大学で洋書専門書や資料が少ないため、効率的な研究遂行のために設備備品費で図書・資料を購入する必要がある。特に、設備備品費の大部分は、『2010年世界農林業センサス』の集落個票データの購入が占める。また、消耗品費として、収集資料の確実かつ隔離された記録・保存のためのパソコンメディアを購入予定である。また、北海道を中心とした国内調査、研究成果発表のための国内旅費、学会誌投稿料に研究費を使用予定である。
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