研究課題/領域番号 |
24780226
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
山本 淳子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 本部連携普及部連携広報センター, 主任研究員 (00355471)
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キーワード | 新規参入 / 第三者継承 / 就農 |
研究概要 |
平成25年度は、農業への新規参入ルートのうち「第三者継承」について、昨年度に引き続き新規参入者および就農支援を行う関係機関への聞き取り調査、および就農相談員との意見交換を行い、新規参入者の経営資源獲得プロセスの特徴を把握した。 第三者継承については、平成20年度から全国農業会議所「農業経営継承事業」により支援が行われているが、事業開始以降、マッチング(継承に向けた研修の実施)81件、経営移譲完了24件で、特に24年度から取り組み件数が大きく増加している。この中で、①北海道以外は東日本(東北・関東)の事例が少なく、地域差がある。取り組み事例が多い西日本については、②移譲希望者の経営規模が小さいことも多く、第三者継承が即専業経営の育成となっているわけではない、③移譲者の農地へのこだわり(「第三者継承しても10年後には農地を返還してほしい」等)がマッチング後の取り組み中止の要因となる例が見られる、等の課題があることが把握できた。さらに、肉用牛経営での第三者継承の取り組みでは、移譲者と継承者のマッチングや技術指導等は順調に進んだものの、有形資産を買い取った場合に各種助成金や融資制度を活用したとしても資金繰りが成り立たないこと等から、マッチングを解消した事例も出ており、「独立就農」ルートでは有形資源獲得がきわめて高額となる畜産では、「第三者継承」ルートでも既存の支援制度下では有形資源獲得が困難な場合があることが明らかになった。 また就農相談員からは、新規参入ルートとして「第三者継承」や「法人経営の経営者になる」ルートは現在でもきわめて限られており、就農希望者の資質に応じたルート選択の実態があまりないこと、むしろ農業に適しているかという観点から相談に応じていることが指摘された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新規参入ルートのうち「農業法人へ就職しその経営者になるルート」は実施事例が少なく調査に至らなかった。また、各地の就農相談員へのアンケート調査から参入ルート別適性を把握する予定だったが、詳細な情報収集が難しいことが判明したため、調査およびその結果に基づく参入者適性の心理学的考察が十分実施できなかった。 一方で、新規参入ルートのうち「第三者継承」事例の調査は進捗していることから、全体的に見ると当初計画よりやや遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
参入ルートの一つである「第三者継承」については、近年取り組みが始まった新しいルートであることから、引き続き実態調査により経営資源獲得プロセスの特徴や参入者適性、支援方策を把握するとともに、結果をパンフレット形式で公表する。 「農業法人へ就職しその経営者になるルート」については、文献調査などを通して実態把握を進める。 また、就農相談員へのアンケート調査に変えて、様々な産業・職種の労働者の職業適性に関する文献調査等をもとに、就農ルート別適性を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
新規参入ルートのうち「農業法人へ就職しその経営者になるルート」の調査について、実施事例が少なく調査ができなかった。また、実態調査およびアンケート調査によりルート別参入者適性を検討する予定であったが、予備調査の段階で、就農相談員へのアンケート調査の項目を絞り込むという当初の計画が難しいことが判明したため、予定していた調査ができなかった。 「農業法人へ就職しその経営者になるルート」の調査はごく少数にとどめ、他のルートの調査を充実させることとし、この調査旅費に使用する。また、第三者継承を中心とした成果が充実してきたことから、パンフレット形式で公表するための印刷費として使用する。そのほか、農業以外の様々な産業・職種における職業適性に関する研究成果を援用するため、各種文献等を購入する。
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