26年度は、①「法人の経営者になる」ルートにおける新規参入者の経営資源獲得プロセスの特徴を整理した。有形資源の獲得は株式の取得を通して行われるが、法人の法律形態によっては多額の資金が必要になる場合がある。無形資源は法人での就業中に前経営者等を通じて徐々に行われるため、法人内でキャリアパスの設定が必要になる。また、法人への就職から経営者交代までが長期になるため、前経営者との信頼関係の維持が課題となる。 ②新規参入者の「第三者継承」への適性を検討した。比較的短い併走期間を経て既存の経営を引き継ぐことから、既に無形資源(技術・知識)をある程度獲得していることが望ましい。また、移譲者との信頼関係構築・維持に向けたコミュニケーション能力や柔軟性が、特に併走期間が長くなる場合に重要となる。 ③新規参入促進に向けた支援体制について考察した。第三者継承を中心に支援する場合には支援者にも高度なノウハウが必要となるが、県の就農相談センターなどが域内の案件に一括して対応することで、担当者や組織内にノウハウが蓄積され、新規参入促進に有効である。多様な参入ルートを想定する場合には、地域内に就農希望者の研修施設を整備し地域の農業者との交流の機会を作ることが、新規参入者の希望や適性に応じた就農ルートの選択とその後の定着に向けた方策の1つとなる。その際、離農希望農家からの農地取得や空き家の確保は地元集落との繋がりの強い市町村が、また第三者継承のマッチングや進め方の助言は、担い手の状況を把握している普及センター等が担うなど、関係機関の得意分野に合わせた役割分担が重要である。 研究期間全体を通じて、新規参入ルート別の経営資源獲得プロセスの特徴・課題を把握するとともに、特に近年増加している「第三者継承」については経営資源獲得プロセスの特徴を反映した支援体制のあり方を明らかにした。
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