研究課題/領域番号 |
24780227
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
田口 光弘 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 本部 総合企画調整部 研究戦略チーム, 主任研究員 (90391424)
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キーワード | 農業生産工程管理(GAP) / 雇用型法人経営 / 経営改善効果 |
研究概要 |
平成25年度に実施した研究の成果は、次のとおりである。(1)前年度はJGAP認証農場のみで実施した聞き取り調査に関し、今年度はGLOBALGAP認証農場4事例や県GAP導入農場2事例などでも実施した。その結果、農業生産工程管理(GAP)を基礎とした生産工程管理により、資材費の削減など経営改善効果をあげているのは、団体認証よりは個別認証の事例で多く見られかつGAP導入の目的が、販売対応ではなく自発的に導入している事例で多く見られた。(2)JGAPやGLOBALGAPなど第三者認証制度のあるGAPに取り組んでいる事例のほうが、経営改善効果をあげていることが多かった。 (3)水田作や露地野菜作に比べ、施設野菜作経営は、生産環境や光熱費のデータなど、数多くのデータを収集することができ、それらのデータを分析することで、経営改善を達成しやすい部門といえる。施設野菜における調査対象事例においては、平成19年実績に比べ平成25年において労務費を283万円削減するとともに、ガス使用量を約3割削減している。 これらは、本研究の第一の目的である「生産工程管理の実態と問題点の把握」および第二の目的である「経営部門間の工程管理の特徴を解明する」に即した研究成果である。 また、平成25年度の研究実施計画では、各経営部門(水田作、露地野菜作、施設野菜作)において、生産計画の決定手順や作業者間の協業関係など解明することとしているが、この計画に対しても概ね順調に達成しているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、(1)アンケート調査および聞取調査により、耕種経営で取り組まれている生産工程管理の実態と問題点の把握を行う、(2)経営部門および工程管理の実施方法の違いにより対象事例を類型化し、観察分析やタイムスタディ等により、各類型の工程管理の特徴を解明する、(3)工程管理の導入による経営改善効果を定量的に評価した上で、類型別に生産工程管理の実施手順とそこでの留意点を提示するの3つであるが、平成25年度に実施した研究により、(1)および(2)の目的を達成できたことから、研究の達成度を上記のとおりとした。
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今後の研究の推進方策 |
これまで実施した実態調査により、当初の研究計画から次の点を変更する。工程管理の実施方法として2パターン(トップダウン型・権限委譲型)を予定していたが、工程管理による経営改善効果の発現状況を比較検討するにあたり、これらパターンで分けることはあまり効果的ではないことから、経営部門間による比較のみを取り上げて、経営改善効果をもたらすための工程管理の実施手順と留意点を提示することとする。 この変更を踏まえ次年度においては、水田作、露地野菜作、施設野菜作の部門別に、次の4点について、どのように経営改善が達成されたのかを検証する。(1)従業員の意識改善、(2)計画的生産の実現、(3)品質・収量の改善、(4)販売の改善。 最後に、部門別に複数の事例調査結果をまとめ、上記4点の経営改善効果を達成するための生産工程管理の実施手順と、そこでの留意点を部門別に提示する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費が生じたが、これが生じた理由は次の2点である。(1)先方との都合が合わなかったため、当初予定していた調査事例すべてを回ることができなかった。(2)当初の計画では、対象事例においてGISソフトウェア等を用いた動線分析やタイムスタディなどを実施する予定だったが、それらの分析をすることが効果的ではないことが実態調査より分かったため、これらの分析に伴うソフトウェア等の購入・旅費の使用がなくなった。 今年度の使用計画としては、水田作、露地野菜作、施設野菜作の3部門について、各部門2~3事例ずつ調査し、生産工程管理の導入により経営改善効果が発生するメカニズム、および改善効果を生み出すための生産工程管理の実施手順と、そこでの留意点を提示することに努める。また、研究成果については、学会報告および論文投稿を積極的に進めたい。
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