研究課題/領域番号 |
24780229
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
伊藤 浩二 金沢大学, 地域連携推進センター, 特任助教 (30530141)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 直播農法 / 水田雑草 / 農法履歴 / 連作 / 水稲 |
研究実績の概要 |
水稲の不耕起V溝直播農法(以降V直農法)は、日本各地の比較的規模の大きな農家・法人を中心に普及が進んでいる。V直農法は生産者にとって、慣行移植栽培との組み合わせにより水稲の経営規模拡大を可能にする重要な選択肢となりつつある。しかし世界各地の直播水田では連作に伴う雑草害による米減収が大きな問題となっている。V溝農法導入の歴史は浅いため(多くは2000年以降)、長期間連作した場合の生産および生物多様性保全上の持続可能性評価が必要である。
本研究では、V直農法の導入による雑草群落組成の変化に着目し、V直農法の継続による種組成変化とそのプロセスを解明することを目的とした。2014年度は、石川県珠洲市の農業生産法人が管理する水田において、V直農法を5年以上継続している8か所の圃場データを用いて、V直農法の連作が水田雑草群落組成に与える影響について詳細な分析を行った。
本調査地における主要な結論は以下のとおりである。①V直農法連作により生産上問題となる雑草として、連作4年目以降にイヌビエやオオクサキビ、イボクサ、クログワイが増加していた。②生育に安定水域が必要な希少雑草ミズオオバコ(沈水植物)は、V直農法連作5年後も生育可能であった。③V直農法の雑草種組成は導入当初は種多様度が低いが、2-3年目に一年生雑草主体の種多様度が高い群落に移行し、連作4年目以降にはイネ科雑草を中心とする雑草群落に変化している。以上より、水稲生産の持続可能性を高めるために、V直農法を3年程度継続したのちに、慣行移植農法あるいは大豆転作を挟む輪作体系の確立が必要と考えられた。ただし輪作導入時の水生の希少植物種を含む生物多様性の保全状況についても注視する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では3つの目的、すなわち①農村景観内での直播農法導入にかかる土地利用・農法の時間的変遷およびその空間分布の評価、②景観スケールおよび圃場スケールにおける植物種の空間分布特性の解明と、その分布を説明する各種環境要因および農法変遷パターン要因の相対的影響力の評価、③保全上重要な植物種に関する、農法との共存を可能にする機構(特に発芽生理の観点)の解明を挙げている。
研究2年目までは目的①・②については珠洲市N地区において調査を行い、農法変遷と雑草群落の関係性について一定の結論を得ることができた。目的③については、当初実験によるプロセスの解明を試みると計画していたが、V直農法の水田雑草群落の種組成の経年変化について全体像を明らかにした上で、ターゲットとなる種を特定した方がより実態に迫ることができると判断して、種組成分析に注力した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として第一に、珠洲市N地区を中心にひきつづき農法間ごとの植物種組成の野外調査と環境要因、農法変遷パターンの調査を行い、統計モデルを作成する。その際に、より広域での調査が可能になるように、ラインセンサスによる簡易な植生調査手法の適用を検討する。 また上記の野外調査によって得られた農法間の種組成のパターンが生じる原因となった、環境条件に対する植物種の生態的応答のメカニズムを確かめるため、2つの実験を行う。1つ目は、珠洲市N地区の埋土種子集団を含む現地土壌を用いて、実際の農法を模倣した水位変動パターンと土壌耕起時期をコントロールしたメソコズム実験(実験水槽での土壌撒き出し実験)を実施し、埋土種子集団から成立する植生を調査する。これによりV直農法下で希少種を含む雑草群落の成立を可能にする機構の解明を試みる。2つ目は、特に直播農法との関連が強い植物種(イヌビエ、オオクサキビ)や保全上重要な種(ミズオオバコ)の種子を現地から採取し、次年度以降最終年まで、人工気象室条件下での前処理(保存状態)および温度・光条件を変えた発芽試験を実施し、発芽適温等の解明を行うとともに、永続的埋土種子集団(1 年以上の寿命を持つ埋土種子集団)の形成可能を検討し、発芽特性の観点から現地植生と農法の関連性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画進捗の変更により実験機材、調査地点数が減少したことに伴う物品費・謝金、成果報告に必要な経費が余剰した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果の取りまとめと普及を目的とした冊子の印刷を予定している。また、農法ごとの植物種組成の野外調査と環境要因の調査、メソコズム実験を行うにあたって、調査補助員および聞き取り調査協力に対する謝金、消耗品の購入を計画している。さらに営農上問題となる植物種や保全上重要な種の発芽生態を明らかにするための、人工気象室条件下での発芽試験に必要な消耗品の購入費、調査補助員の謝金を予定している。
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