研究課題/領域番号 |
24780233
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
齊藤 忠臣 鳥取大学, 農学部, 講師 (70515824)
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キーワード | 樹体内水分 / 水の安定同位体比分析 / 乾燥地 / 樹木 / 誘電率水分計 / スーダン / アメリカ |
研究概要 |
本研究の目的は,土壌水分・地下水のモニタリングと樹体内水分モニタリング,そして水の安定同位体比分析を組み合わせることにより,通常は解明が困難な乾燥地樹木の時間的・空間的な水利用戦略,すなわち樹木が「いつ」「どこから」「どれくらいの」水を「どのように」使うのかを解明することである.対象とする樹木は,アメリカの在来種でスーダンにおける外来侵入種であるメスキートと,アメリカにおける外来侵入種であるタマリスクである. 24年度に,樹体水分モニタリングと同位体分析のためのサンプリングサイトを,アメリカ・ネバダ州で1サイト,スーダン・ハルツーム近郊で3サイト設営した.アメリカのサイトに関しては,2013年12月でサイトを撤収し,スーダンのサイトに関しては25年度以降も継続して研究を行う予定である. 樹体内水分モニタリングには,誘電率水分計GS3(Decagon社)を使用し,同様のセンサーを用いて土壌水分・塩分・温度モニタリングも実施している.なお,誘電率水分計を用いた水分モニタリング結果には,気温・地温による影響(温度依存性)が見られたため,これを校正する手法の開発も行っている. 水の安定同位体比分析については,各サイトにおいて雨水・地下水・土壌・樹体等のサンプリングを行い,安定同位体比質量分析計を用いて酸素・水素の同位体比を測定している.これまで土壌・樹体サンプルからの水抽出に三重大学の真空蒸留装置を用いていたが,現在,鳥取大学農学部内に新たな抽出装置を構築中であり,以後この装置で抽出を行う予定である. 結果より,主に地下水に依存していると考えられているスーダンのメスキートが,雨期において土壌水分を使用していることや,アメリカのメスキートとタマリスクが共に塩濃度の高い浅い地下水を利用しており,メスキートがタマリスク同様高い耐塩性を持つことなどが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では,24年度は主に国内において予備実験等を行い,25年度後半から海外での調査を開始する予定であったが,スーダン・アメリカの海外研究協力期間や研究協力者らのサポートもあり,24年度中からから2か国計4か所の海外調査サイトを立ち上げる事ができた.また,25年度においてもモニタリング・サンプリングが概ね良好に継続されており,現時点までで得られた結果からも,興味深い知見等が得られている. 以上のように,研究は当初の計画以上に順調に進んでいると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
アメリカでの調査については,既に十分成果が得られた上に,現地研究機関の予算上の問題でサイトの維持が困難なこともあり,2013年12月にサイト・機材を撤収した.今後は得られたデータの解析やサンプルの分析,また現地樹木を用いた樹体水分センサーの校正実験を中心に研究を進める. スーダンについては,本研究の中心となる調査地として,今後ともモニタリング・サンプリングを継続して行う. 安定同位体比分析に必要な土壌・樹体サンプルからの水抽出については,これまで三重大学内の真空蒸留装置をお借りして実施してきたが,今後多くのサンプルを処理する必要があることから,自前での水抽出が可能となるよう,2015年度中に鳥取大学農学部内にて同装置を組み上げる. 調査対象地が乾燥地であり,温度・塩分の変動が激しい条件であるため,誘電率水分計の温度依存性・塩依存性とその校正法の研究を継続して行う. 得られた研究成果については,国内外の雑誌・学会等で積極的に発表していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末にあたる2014年3月に,アメリカ・ヒューストンで開催された国際学会に参加したが,この旅費が当初の予定よりも若干安く済んだため余剰金が生じ,これを次年度使用額として繰り越すこととした. 次年度使用額は翌年度分として請求した助成金と合わせ,翌年度のスーダンへの調査旅費に使用する予定である.
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