研究課題
本研究の目的は,土壌水分・地下水のモニタリングと樹体内水分モニタリング,そして水の安定同位体比分析を組み合わせることにより,通常は解明が困難な乾燥地樹木の時間的・空間的な水利用戦略,すなわち樹木が「いつ」「どこから」「どれくらいの」水を「 どのように」使うのかを解明することである.対象とする樹木は,アメリカの在来種でスーダンにおける外来侵入種であるメスキートと,アメリカにおける外来侵入種であるタマリスクである.調査サイトをアメリカで1サイト,スーダンで3サイト設営した.樹体水分のモニタリングは,アメリカで24~25年度,スーダンで24~27年度に実施し,サイトから持ち帰った樹体サンプルを用いて水分計の校正実験を行った上で,データの解析を行った.加えて,26~27年度にはより厳密な条件下で樹体水分・樹液流のモニタリングを行うため,日本のタブノキを対象にしたモニタリングを実施した.水の安定同位体比分析については,土壌・樹体サンプルからの水抽出に必要な真空蒸留装置を25年度に作成し,25~27年度にかけてサンプルからの水抽出と安定同位体比質量分析計を用いた酸素・水素の同位体比の測定を行った.結果より,主に地下水に依存していると考えられているスーダンのメスキートが,雨期において土壌水分を使用していることや,アメリカのメスキートとタマリスクが共に塩濃度の高い浅い地下水を利用しており,メスキートがタマリスク同様高い耐塩性を持つこと などが明らかとなった.また,タマリスクの樹体水分が観測期間中に単調減少し続け,その一方で樹体内の塩濃度が増加していることが分かった.これはタマリスクの生物的駆除のためにアメリカ政府が導入したタマリスクビートルが,タマリスクの葉を食べることに より,タマリスクが弱っていく様子を捉えることが出来たものと考えられる.
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Vadose Zone Journal
巻: 15 ページ: 1-9
10.2136/vzj2015.04.0061