研究課題/領域番号 |
24780245
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
圖師 一文 宮崎大学, 農学部, 准教授 (50435377)
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キーワード | 塩ストレス / トマト / ネットワーク分析 / 食味成分 / 機能性成分 |
研究概要 |
本年度の目的は,トマトに様々な環境ストレスを付与し,ストレス指標および収穫後の果実品質構成要素を測定後,ネットワーク分析を行い,ストレス指標を元に品質の変化の予測可能性を検討することである.この目的のために,さまざまな塩ストレス強度下で栽培したトマト果実において果実内成分(食味成分,機能性成分)を測定し,測定した値を元に,相関分析を行い,相関のある項目についてネットワーク分析を行った.この際,塩ストレスに対する反応の異なる2品種を用いて,両品種間でネットワーク構造が異なるかどうか明らかにした.この結果,1)個々の成分の相互作用(つながり具合),2)ハブ(多くのつながりを持つ)となる果実品質の有無,3)ネットワーク構造の品種間が明らかになった. 具体的には,1)においては,品種によって異なるが糖,有機酸などの食味成分とアスコルビン酸,ポリフェノール,抗酸化活性などの機能性とのつながり具合が高いことが明らかになった.2)においては,抗酸化活性,クエン酸,γ-アミノ酪酸,アスコルビン酸がネットワーク上のハブとなり,塩ストレスによる品質の変化に重要な役割を果たすことが明らかになった.3)においては,上述した個々の成分の相互作用に大きな品種間差が認められることがそれぞれのネットワークにおける特性値(次数分布など)を算出することにより明らかになった.これらのことから,ネットワーク分析を用いて塩ストレス下のトマトにおける果実品質(食味成分,機能性成分)の相互作用を可視化でき,ネットワークの特性値から,塩ストレスがネットワーク構造に及ぼす影響ならびにその品種間差を明らかにできた. また,塩ストレス下のトマトの葉において測定したストレス指標と果実内成分とのネットワーク分析を行い,ストレス指標と関連性の高い果実内成分を見いだした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,圃場条件下における実験結果についてのみ解析を行った.当初計画では,ストレスを再現性よく正確に与えるために人工気象器内で実験を行い,成分測定ならびにネットワーク分析まで行う予定であったが,現在実験が継続途中であり,このことからやや遅れていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,平成24年度ならびに平成25年度に得られた結果をもとに,作成したネットワークにおいて,塩ストレスがストレス指標と果実品質構成要素間のネットワーク構造に及ぼす影響とストレス間の差異を明らかにする.その後,果実品質とつながりの多いストレス指標を抽出し,ストレス指標から果実品質の変化を予測できるかどうか検討する.また同様に,塩ストレスと他のストレスの相互作用下におけるネットワーク分析を行い,環境ストレス下のトマトにおける高品質安定生産に向けたネットワーク分析の応用についてのとりまとめを行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
新たに実験に使用する温室の整備が間に合わなかったことと実験の進捗がやや遅れていることから,次年度使用額が生じた. 今後の使用計画としては,新規に使用する温室内の消耗品購入ならびに実験の消耗品購入費として用いる予定である.
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