研究課題/領域番号 |
24780251
|
研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
尹 永根 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (50609708)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 放射性セシウム / RIイメージング技術 / 根箱装置 / 画像化 / 動態解析 |
研究概要 |
H24年度は、植物RIイメージングのための1)「根箱装置」の開発、2)ポジトロン放出核種である放射性セシウム129(Cs-129)の製造・精製・計測条件の検討を行った。 まず、硬質アクリル板を材料に2種類の「根箱装置」を開発した。この装置は、植物の長期間の土耕栽培が可能で、そのままポジトロンイメージング装置(PETIS)にセットし、土壌―根系―地上部を対象にしたRIイメージング実験が可能な構造を持っている。これを用いたイネなどの栽培試験では、植物の正常な生育が可能であることを確認した。「根箱装置」を用いたトレーサ投与の実験系の予備実験として、試作版の「根箱装置」に土耕栽培した根系周辺へポジトロン放出核種であるNa-22を投与し、PETISで撮像を行った。その結果、土壌中および植物体内のNa-22の移行の様子を画像化することに成功した。 次に、ヨウ化カリウム(KI)をサイクロトロン施設で照射した産物(カリウム、ヨウ素、Cs-129が混在)から高純度のCs-129を精製する方法を数種類の精製カラムを用いて検討した。そこで陰イオン交換カラムを用いて溶液中のヨウ素を除去し、精製したCs-129トレーサをイネの水耕液に投与してPETISを用いて96時間連続撮像を行った。その結果、ポジトロン放出割合が極めて低いにも関わらず、根系におけるCs-129の分布を示す画像の取得が可能であることが確認できた。しかし、Cs-129が地上部に移行する様子は殆ど捉えられなかった。これはCs-129トレーサ溶液中に高濃度に存在するカリウムイオンの競合による影響が大きいと考えた。そこで、市販の精製カラムを用いてカリウムとセシウムの分離・精製を試みたが、精製目標を満たすカラムは見つからなかった。現在、当該機構で開発したセシウムを特異的に吸着するカラムを用いて精製方法を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H24年度に実行した研究の中で、高純度のCs-129トレーサを精製する方法の確立に関する進行が少し遅れを取っている。その原因は、カリウムとセシウムの性質が非常に近いため、水溶液中に混在する両物質を分離することが非常に難しい点にある。これまで、カリウムあるいはセシウムを特異的に吸着する性質を持つ市販の分子認識カラムなどを用いた精製方法を試みたが、イメージング実験に十分な純度と量を精製できなかった。ところが、現段階ですでにセシウムを特異的に吸着する性質を持つ有望なカラムの候補が見つかり、精製条件の最適化を検討している最中である。 本年度の実験の成果は、交付申請書に記載した「研究の目的」の前半部分に当たり、一部分の進行が少し遅れているほか、おおむね研究実施計画の通り進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
H25年度は、引き続き高純度のCs-129を精製する方法を検討し、水耕栽培あるいは「根箱装置」で土耕栽培した植物の根域へ精製したCs-129トレーサを投与し、PETISを用いて撮像を行う実験方法を確立する。この方法を利用して、セシウム高/低吸収候補の植物を用いてデモンストレーションを行い、植物における放射性セシウムの移行能力を解析する。 上記のCs-129トレーサの精製が難航している現状を考慮すると当初の計画通りに進まない可能性がある。その場合、すぐにCs-137のイメージングが可能な高エネルギーガンマ線検出用のガンマカメラ(所属研究グループにおいて利用が可能)とCs-137(購入RI)を組み合わせて、計画を遂行する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は、H24年度に開発した「根箱装置」に現地の土壌を組み合わせて実験室でイメージング実験を行うことを想定しているため、数回分の現地入りの旅費を計上した。「根箱装置」はRI実験に使用(RI汚染物として廃棄)するため、実験回数に伴い必要数量が増加する。また、投稿論文や学会だけではなく、一般市民向けのシンポジウムなどにも積極的に参加して研究成果の発信を行うため、旅費を前年度より多めに計上した。その他、論文雑誌への英文投稿のための英文校閲費、投稿料として使用する。実験手法の変化に伴い、購入RIの費用が発生する可能性がある。
|