カリウムは植物のセシウム吸収を抑制するため、カリウムフリーのCs-129トレーサの精製方法の確立は本研究の進行において最も重要である。H25年度は、前年度に続いて照射産物の水溶液(カリウム、ヨウ素、Cs-129が混在)からCs-129を精製する方法を検討した。申請者は、所属機関が新たに開発したセシウム捕集材をカラムに充填し、Cs-129の精製を試みた。このカラムがCs-129を吸着する過程をポジトロンイメージング装置(PETIS)で撮像したところ、明瞭な動画像を得ることに成功した。また、5 mM硫酸アンモニウム溶液を用いたカラムの洗浄によるCs-129の溶出実験の結果、溶出液中のカリウム濃度が3 umol/L以下であることが分かった。精製したCs-129トレーサをダイズの根に投与しPETISで撮像を行ったところ、セシウムの吸収・移行の定量的解析が可能な動画像は得られなかった。その原因は、本カラム(セシウム捕集材)によるCs-129の吸着は非常に強固であるため洗浄による溶出は難しく、本研究に必要な量のCs-129が確保できなかったことにある。 そこで、Cs-129を用いた本研究の遂行が困難であると判断し、H25年度後半から急きょCs-137(購入RI)とガンマカメライメージング装置を用いて、植物のセシウム動態解析の実験系の構築を行った。結果、ダイズの水耕培地中の根に投与したCs-137が地上部に移行していく様子をガンマカメラで可視化し、定量的解析を行うことに成功した。 また、植物のセシウム吸収の促進/抑制メカニズムの解明研究の一環として、H24年度に開発した「根箱装置」を利用し、C-11ラベルした二酸化炭素とPETISによる根の分泌物(有機酸など)の可視化を試みた。結果、C-11―光合成産物の根への転流と土壌への分泌物の両方を可視化し、定量的に解析する実験系を確立した。
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