21世紀型農業では、圃場の状態や作物の詳細な情報をいかに効率よく取得するかが重要となっている。その方法の一つとして、これまでに開発してきた定点型の圃場観測装置を拡張し、広域かつ精細な情報が求められる移動型の圃場観測装置を検討してきた。ドローンに代表されるように移動型システムのニーズは高まっているが、上記の目的を満たすには様々な課題が山積している。本研究では、特に地面を走行する移動型圃場観測装置を対象とし、搭載したカメラが取得した大量の生画像データを利用して、対象となる作物などの詳細情報やシステムを運用するうえで必要となる情報を抽出するための手法を検討した。 まず、テストベッドとなるハードウェア、運用システム、データ処理プログラムを開発し、移動型圃場観測システムを実現するうえで課題となる点を明らかにした。特に画像処理に関しては、OpenCVをベースに各画像の重なりを検出してそれぞれの画像の関連付け情報を取得するとともに位置情報を推定する画像解析アルゴリズムを開発した。また周囲の環境情報を利用することで画像処理をより効率的に行えるアルゴリズムに関しても開発した。これらをもとに、圃場内で取得した時空間的に大量な画像をGoogle StreetViewのように圃場内の様子を3次元表示したうえに、さらに時間変化も提示するアプリケーション「Crop-Field-View」の開発を行った。本年度は複数の実験圃場でこれらを運用してシステム全体の改良を行うとともに、さまざまな視点から撮影された大量の画像から詳細な3次元再構築を行うアプリケーションも開発するとともに、再構築データを精度良く実現するための様々な条件・手法についても検討を行った。
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