研究概要 |
国内の重要肉牛品種である黒毛和種について、栄養獲得の根幹を担う第一胃(ルーメン)内微生物に関してほとんど知見が得られて いない。本研究課題では黒毛和種ルーメン内での飼料分解、発酵に深く関与する主要微生物群を特定し、本品種の安定生産に寄与しう る基礎的知見を取得することを目的とした。 平成25年度は前年度に特定した黒毛和種ルーメン内コア細菌群23グループのうち、PCRプライマーの設計が可能であった17グループについてReal-time PCRによってルーメン内分布量を測定した。解析には21頭の黒毛和種肥育牛から14ヶ月、18ヶ月齢、22ヶ月齢および26ヶ月齢時に採取したルーメン内容物を用いた。また、比較対象としてTMRもしくは放牧草を給与したホルスタイン種およびブラウンスイス種泌乳牛より採取したルーメン内容物についても同様に17菌群を定量した。標的細菌群のうち、黒毛和種ルーメン内ではデンプン分解菌(Ruminicoccus bromii近縁グループ、Streptococcus bovis, Butyrivibrioグループ)や乳酸利用菌(Selenomonas ruminantium)の分布量が泌乳牛よりも多かった。したがって、これらの菌群は黒毛和種ルーメン内での濃厚飼料分解において重要であるものと考えられた。 ルーメン内短鎖脂肪酸産生と増体、飼料要求率もしくは筋肉中の脂肪酸不飽和度の相関を調べたところ、酢酸割合と増体および酪酸割合と飼料効率に正の相関が見られた。また、酢酸・プロピオン酸濃度比と筋肉中の脂肪酸不飽和度には有意な負の相関がみられ、プロピオン酸割合が高い個体は筋肉中の脂肪酸不飽和度が高かった。次世代シーケンサーによる個体ごとの網羅的菌叢解析データ、発酵パターンおよび産肉成績を照合することでこれらの関係性を解明できるものと考えている。
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