研究課題
若手研究(B)
本研究は、放牧家畜のエネルギー消費量(EE)の推定において、3次元加速度センサーから算出される動的体加速度(ODBA)の利用が、従来の心拍数測定の代替手法となりうるかを検証することを目的としている。初年度である当該年度は、まず個体の運動指標として3次元加速度が有効であることを確認するため、放牧牛にGPS、歩数計および心拍計を装着して同時にデータを収集し、解析を行った。その結果、申請者らが以前に開発したGPSから算出した移動距離と移動傾斜角度を用いた推定法よりも、個体運動をより直接的に表す歩数の方が心拍数によるEE推定とより相関が高いことが明らかとなった。このことから、歩数よりもさらに直接的に運動の指標となり得るODBAがEE推定に有効である可能性が確認された。次に、山羊および牛それぞれに対し、同時に3次元加速度センサーと心拍計を装着して放牧させ、ODBAと心拍数変動のデータを取得してそれらの関係性を解析した。その結果、従来EE指標として用いられている心拍数変動とODBAにおいて、個体レベルで中~高程度の相関があること、ODBAを独立変数、心拍数を従属変数とした際、個体レベルでは回帰式の作成が可能であることが認められた。また、ODBA以外の心拍数変動要因としては気温と体重が主要因であること、さらにはそれらを変数として導入すれば個体や家畜種(山羊・牛)の違いを超えてODBAから心拍数を推定し、申請者らが先行研究で用いた心拍数によるEE推定式と統合すればODBAから放牧家畜のEEを推定することが可能であることが示された。放牧家畜に対して、従来の心拍数測定と比較してODBAの測定は著しく容易であり、これらのことから、大幅に簡易化した放牧家畜のEE推定法を確立し、その方法を様々な放牧家畜・放牧条件下で用いることが可能となると考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度の研究計画は、「放牧家畜における心拍数変動とODBAの関係解析」を目的としており、具体的に、山羊による予備試験と放牧牛による本試験にて、心拍数と3次元加速度センサーを装着して心拍数変動とODBA、さらには本試験では行動センサー(IceTag)やGPSも装着し、ODBAと心拍数変動の関係性の検討や、ODBAと行動センサーとの関係解析、GPSデータとの関係解析を実際に実施することができた。さらには、当初次年度以降に計画していた「ODBAを用いた酸素消費量推定式の作成と検証」に対し、初年度の段階で何度か予備試験を実施することができ、その実現可能性を検討することができた。これらから、従来の計画予定以上の進捗状況であると言える。
今年度は、ODBAから心拍数変動を推定し、さらにそこから酸素消費量およびEEを推定する、という間接的な方法だけでなく、ODBAから直接酸素消費量およびEEを推定できる推定式を作成することが第一の目的となる。初年度に行った予備試験で、自由放牧下において3次元加速度センサーを装着した放牧牛の呼気を回収することが、ある程度の困難さは残るものの、実施可能であることが認められたため、その試験に注力する予定である。今後、計画通り推定式が作成できれば、様々な放牧条件下で放牧牛のODBAを取得し、作成した推定式を用いてEEを推定することを目指している。
該当なし
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日本畜産学会報
巻: 94 ページ: 67-76
Proceedings of the 15th Animal Science Congress, The Asian Australasian Association of Animal Production Societies, Bangkok, Thailand
巻: - ページ: 2826-2829
http://www.animprod.kais.kyoto-u.ac.jp/seika/seika_new.htm