研究課題/領域番号 |
24780255
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大石 風人 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50452280)
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キーワード | 畜産学 / 栄養学 / 放牧 / エネルギー消費量 / 加速度センサー |
研究概要 |
本研究は、放牧家畜のエネルギー消費量の推定において、3次元加速度センサーから算出される動的体加速度(ODBA)の利用が、従来の心拍数測定の代替手法となりうるかを検証することを目的としている。 初年度においてODBAと心拍数変動との関連性を検討した結果、ODBAが簡易なエネルギー消費量推定法の代替法となり得ることが示されたことを背景に、2年度である当該年度は、ODBAからエネルギー消費量の基本指標である酸素消費量を直接推定するためのキャリブレーションを目的として研究を実施した。具体的には、東海大学農学部(熊本県)の附属試験牧場にて、牛に加速度センサーおよび呼気採取用マスクを装着し、戸外にて自由歩行をさせながら呼気を採取し、加速度センサーにより得られたODBA測定値と呼気採取により得られた酸素消費量測定との関係を解析することを目的として試験を実施した。しかしながら当該試験では戸外の自由歩行下における牛の呼気採取を必要としており、当該年度は、牛の自由行動によらず安定的に戸外で呼気を採取することができず、キャリブレーション解析を行えるほどのデータ数を採取することが困難となった。その結果、当該年度においては十分な研究成果を得ることが出来なかった。なお、初年度で得られたデータおよび2年度で追加して得られたキャリブレーション用データ以外のデータを基に追加解析を実施しており、その検討に対しては結果をまとめ現在論文を草稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の研究計画は、「放牧家畜における心拍数変動とODBAの関係解析」を目的としており、具体的に、山羊による予備試験と放牧牛による本試験にて、心拍数と3次元加速度センサーを装着して心拍数変動とODBA、さらには本試験では行動センサー(IceTag)やGPSも 装着し、ODBAと心拍数変動の関係性の検討や、ODBAと行動センサーとの関係解析、GPSデータとの関係解析を実際に実施することができた。しかしながら、次年度において計画していた「ODBAを用いた酸素消費量推定式の作成と検証」に対し、初年度の段階で何度か予備試験を実施することができたにも関わらず、ある程度の困難さは予期していたものの、予想以上に呼気採取マスクの故障やその固定等に問題が生じ、結果として解析を行うに十分なデータを採取することが出来なかった。これらから、従来の計画予定に対し、やや遅れを取ってしまっている進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度においてODBAから直接酸素消費量およびエネルギー消費量を推定するためのキャリブレーションに対し十分な成果が得られなかったことを踏まえ、本課題の最終年度は、方法論的な視点をやや変更し、従来家畜生産に用いられているイギリス飼養標準(ARC)の理論を応用し、安静時のエネルギー消費量にODBAを用いた行動指標を加算的に利用し、放牧活動時のエネルギー消費量を推定するという方法を検討する。この理論的な背景に対する実測データによる検討はすでにある程度実施しており、この方法の利用可能性に対する検証は出来ている。そのため、最終年度では、牛や山羊、めん羊などの反芻放牧家畜に対して、幾つかの放牧条件下でODBAのデータを採取し、先述の理論を基にエネルギー消費量を推定することを実施する予定である。この推定および検証が十分になされれば、加速度センサーによる放牧家畜の簡易なエネルギー消費量推定法の確立、という本研究課題の目的を達成することが出来ると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
遠隔地(熊本・東海大学農学部)での実地試験が1回分中止となったため。 熊本や他の試験地において実地放牧試験を実施するため、その旅費に計上する予定である。
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