本研究では、進化的アルゴリズムの一つである差分進化法 (Differential evolution: DE)等を用いて我が国家畜ふん尿処理の最適化を行い、環境影響・コスト等に応じて都道府県ごとに最適化されたふん尿処理方式の組合せを明らかにし、国レベルの農業環境施策および地域マネジメントに資することを目的とする。 本年度は、様々な家畜ふん尿処理手法について、投入物と処理物のマテリアルバランス、コスト、環境負荷すなわち温室効果ガス排出量、富栄養化物質排出量、非再生可能エネルギー消費量の解析を完了した。そして、畜種別家畜ふん尿発生量、各畜種におけるふん尿処理方法別割合、農作物の種類および作付面積に基づくふん尿由来肥料需要量と合わせ、家畜ふん尿処理に関わる環境負荷物質排出量、地域内栄養塩バランスを都道府県別に算出するモデルを構築した。構築したモデルに基づき、温室効果ガス排出量あるいはコストを目的関数としてDEを用いて家畜ふん尿処理の最適化を行うプログラムを作成した。液肥の需要量を制約条件とし、作成したプログラムを用いて都道府県レベルで最適化を行い、その和を全国値とした。最適化にあたり、コストを制約条件として追加してGHGの最小化を行うより、現状の値で除して標準化したGHG排出量およびコストの和を最小化する方が、GHG排出量とコストを同時に最小化するには適していることが明らかとなった。このとき、全国レベルでGHG排出量を55%、コストを20%それぞれ削減可能と算出された。今回作成した家畜ふん尿処理環境評価モデルおよびその最適化プログラムは、目的関数および制約条件を変更して様々な条件におけるふん尿処理の最適化を行うことが可能であり、また市町村等さらに小さい地域にも適用可能である。
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