研究課題/領域番号 |
24780265
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
川原 学 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70468700)
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キーワード | ゲノムインプリンティング / インプリント遺伝子 / 胚発生 |
研究概要 |
本研究では,父性ゲノムを用いない二母性マウス胚と野生型(WT)胚を用いて新規父性メチル化インプリント遺伝子の有無について検証した。二母性胚では7番および12番染色体上の2領域以外の父性メチル化領域はデフォルトの状態にあるため,それ以外の父性メチル化インプリント遺伝子については母性ゲノム様の発現パターンを示すと考えられる。このことから,既知4領域以外に父性メチル化領域が存在していれば,WT胚と比較して二母性胚では発現差がみられると考えられる。そこで、二母性胚とWT胚でマイクロアレイ解析を行い,発現差がみられた遺伝子について多型解析を実施し,発現アリルを決定した。方法としては初めに,胎齢12.5日における,7番染色体のみ遺伝子発現を補正したng⊿7ch/fg,12番染色体のみ発現を補正したng⊿12ch/fg,そして双方において遺伝子発現を補正したng⊿Double/fgの各二母性胚とWT胚の遺伝子発現をマイクロアレイによって解析し,2倍以上の発現差がある遺伝子をピックアップした。次に,それらについて,JF/Ms(J)およびC57BL/6N(B)系統間で多型を調べ,J×BおよびB×J間のF1胎齢12.5日胚の発現遺伝子について多型解析を実施し,発現アリルを決定した。全タイプの二母性胚とWT胚において遺伝子発現差を比較し,発現差があり,かつ,発現の増加および低下の傾向が同じ遺伝子を調べた結果,35遺伝子が確認された。これらの遺伝子のうち多型が検出された33遺伝子について発現アリル調べた結果,全て両アリル発現を示すことが明らかとなった。そのため,全身性発現を示す父性メチル化インプリント遺伝子は既知4領域のみであることが示唆された。しかし,インプリント遺伝子発現は組織特異性を示す例もあるため,今後,標的組織を絞って組織特異的な発現を比較していく必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画に沿って、前年までに3種の二母性胚由来マウスの遺伝子発現データから候補遺伝子を導きだし、その遺伝子についてC57/Bl6系統マウスとJF1系統マウスとの多型情報の整理を行い、遺伝子発現アリルの決定を完了した。その結果、全身性で片親性発現制御を受けるような遺伝子がないことを確認した。さらに研究を進め、現在は臓器別での解析に深化させている。研究計画に通りに、二母性胚の遺伝子発現解析から父性メチル化インプリント遺伝子の有無について断言できるレベルまで到達できる進行状況と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
異なる二系統のマウス、すなわち、C57Bl6とJF1における交配で得られたF1胎子について、主要組織である脳、舌、肺、肝臓、腎臓、心臓、腸、四肢の7種のパーツごとにRNAサンプルを用意した。このサンプルを使用して、現在までに解析した33種の遺伝子のうち、とくに発現パターンが片親性に近かった2種の遺伝子について発現アリルを決定する。さらに、候補遺伝子については二母性胚、単為発生胚、雄核発生胚での発現レベルを決定する。
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