研究課題/領域番号 |
24780267
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉浦 幸二 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (20595623)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 卵巣卵胞 / 卵母細胞 |
研究概要 |
本研究では、卵母細胞の新たな発達制御メカニズムの解明を目指した。卵母細胞の発達には卵丘細胞が重要な役割を果たすことから、卵母細胞が分泌する増殖因子(卵由来シグナル)とエストロゲンとの相互作用が、卵丘細胞の分化・機能に与える影響を明らかとすることを目標とした。具体的には、この相互作用の重要因子の候補Nrip1とNogginに着目し、卵胞発達過程でのNrip1およびNogginの詳細な発現動態とその制御の解析、培養下でのNogginの卵丘細胞・卵母細胞の分化・機能への影響の解析、そして、マウス生体内においてエストロゲンと卵由来シグナルの相互作用を阻害することが卵母細胞の発達・発生能に与える影響の解析を行う。平成24年度は、主にNogginに着目し、発現制御およびその機能解析を行った。発現制御解析により、卵丘細胞におけるNogginの発現は、卵由来シグナル、特に骨形成因子15(BMP15)および成長分化因子9(GDF9)によって促進され、一方、エストロゲンによって抑制されることが明らかとなった。さらに、顆粒膜細胞培養系を用いたNogginの機能解析の結果、Nogginが卵母細胞の分泌するBMP15の機能を抑制できることを明らかとした。これらの結果は、卵由来シグナルとエストロゲンが卵丘細胞でのNogginの発現を制御し、一方でそのNogginが卵由来シグナルを制御することで卵母細胞の発達に重要な役割を果たすことを示唆する初めての知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、主にNogginの発現制御および機能解析を行った。Nogginの機能解析については、平成24年度後半から平成25年度前半にかけて行う予定であったが、この部分については予定より早く研究が進行し、ほぼ完了させることができた。一方、当初は、平成24年度中にNogginおよびNrip1のトランスジェニックマウスを作成する予定であったが、Nogginの発現制御・機能解析を中心に行った分、遅れが生じてしまいトランスジェニックマウス個体を得るまでには至らなかった。総合的に見ておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに予備実験を行い、当該研究室において高効率で卵丘細胞・顆粒膜細胞の初代培養に遺伝子導入を行う実験系を確立することができたので、この系を用いて顆粒膜細胞におけるNrip1の機能解析を行う。さらに、NogginおよびNrip1を顆粒膜細胞特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスを作成する。トランスジェニックマウスが作成され次第、卵胞発育の動態とメスマウスの妊孕性の解析、体外受精による卵母細胞の発生能の検討に加え、それまでの実験で推察されたエストロゲンと卵由来シグナルの相互作用の機能について検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に引き続きNogginおよびNrip1トランスジェニックマウスの作製のための消耗品(培地、試薬、プラスチック器具など、50万円)、実験動物(マウス購入および作製したトランスジェニックマウス系統の維持管理、50万円)などに用いる。また、Nrip1の機能解析を行うために、顆粒膜細胞培養系を用いた遺伝子導入を行うが、そのための消耗品(培地、トランスフェクション試薬、遺伝子解析用試薬、プラスチック器具など、30万円)、実験動物(マウス、20万円)などの購入に用いる。これらの、実験では複数の大学院生に、研究補助を月10時間程度(年間120時間)依頼するため、12万円の謝金を支払う。
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