本研究では、卵母細胞の新たな発達制御メカニズムの解明を目指した。卵母細胞の発達には卵丘細胞が重要な役割を果たすことから、卵母細胞が分泌する増殖因子(卵由来シグナル)とエストロゲンとの相互作用が、卵丘細胞の分化・機能に与える影響を明らかとすることを目標とした。平成25年度は、卵丘細胞内での遺伝子発現に対する卵由来シグナルやエストロゲンの影響について、マイクロアレイによる網羅的解析を行った。遺伝子オントロジー解析の結果、エストロゲンは卵由来シグナルに対して遺伝子発現全体としては大きな影響を持たないものの、卵由来シグナルはエストロゲンシグナルに大きな影響を持つことが明らかとなった。具体的には、エストロゲンは単体では卵丘細胞の増殖促進やアポトーシス抑制に働くものの、卵由来シグナルの存在下では、卵丘細胞内で細胞内外のシグナル伝達に重要な遺伝子発現を促進することが明らかとなった。 さらに上記で明らかとなった、卵由来シグナルがエストロゲンのシグナルを制御するメカニズムを理解するために、エストロゲン受容体結合因子について発現およびその制御解析を行った。その結果、現在までに当初解析予定であったNrip1を含む複数のエストロゲン受容体結合因子の発現が卵由来シグナルの制御を受けることを見出した。現在、当初解析予定であったBMPアンタゴニストNogginに加えてこれらエストロゲン受容体結合因子の発現を生体内で制御することが卵母細胞や卵丘細胞の発達や機能に与える影響の解析を試みている。
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