研究課題/領域番号 |
24780268
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
永岡 謙太郎 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60376564)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 乳房炎 / 組換えタンパク / トランスジェニック動物 / 乳腺 |
研究概要 |
本研究の目的は、L型アミノ酸オキシダーゼ(LAO)を用いた乳房炎抵抗性ウシ作出の有用性について検討を行うために、ウシ型LAO組換えタンパクの作製とウシ型LAO発現Tgマウスを作製する事である。今年度の成果は以下の通りである。 <ウシ型LAO組換えタンパクの作製>マウス型とウシ型の遺伝子を哺乳細胞系と酵母系の発現プラスミドに組み込み、LAOタンパクの発現を確認した。その結果、哺乳細胞系においては培養上清と細胞内共に得られるタンパク発現量が少なく、LAO発現系には適さないと判断した。酵母系においては、タンパク量としては十分な発現が確認されたが、ほとんどが細胞内に存在した。これらと平行し、カイコ発現系の利用も検討すべく、マウスLAOの発現を外部業者に依頼した。その結果、やはり多くのタンパクが不溶化分画に存在するため、現在可溶化の検討を行っている。 <ウシLAO Tgマウスの作製>乳腺特異的プロモーター(WAP)の下流にウシLAO遺伝子を繋いだコンストラクトを完成させ、マウスの受精卵に導入、現在までに約500個の受精卵を使用し30匹の子マウスを得た。PCRにてウシLAO遺伝子の挿入を確認したところ、1匹のマウスでポジティブの結果が得られている。 <ウシ乳腺におけるLAO発現変化の解析>今年度に石川県の屠場において新鮮乳腺組織を得られる機会を得たため、本試験を繰り上げて行った。全20頭から乳腺組織を採取し、リアルタイムPCR法にてLAO発現量を測定した。カゼイン発現量を指標に乾乳期と泌乳期を、また屠場にて獣医師の診断で正常と乳房炎を区別した(乾乳期4頭、乳房炎5頭、正常泌乳期11頭)。全体としてはこれまでの結果と同様に、マウスに比べるとかなり低い結果であったが、その中でもLAOは乾乳期において泌乳期より高く、乳房炎牛において正常牛より高い傾向が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在の進捗はやや遅れていると言える。 組換えタンパク作製については、哺乳細胞系、酵母系およびカイコ系の3種について検討を行ったが、培養上清中(可溶化分画)に精製を行うに十分なLAOタンパク発現が得られなかった。しかし、酵母系とカイコ系においては細胞内(不溶化分画)に十分量の発現が確認できている。LAO活性を保持させたままの可溶化させる必要があり、現在、15種類の界面活性化剤を用いた検討を開始している。この検討分、進捗に遅れが出ていると言える。 Tgマウスの作製については、約500個の受精卵を使用し、Tgマウスの可能性がある個体が1匹得られているが(約0.2%)、通常では受精卵数に対し5~10%の割合でTg個体が得られる報告があるため、その効率は低いと言える。今後の解析でその1個体が表現系解析に利用可能であれば良いが、バックアップとしてコンストラクトの再構築とBACクローンを用いたTgマウスの作製を行う必要がある。 ウシ乳腺におけるLAO発現変化の解析については、良好な結果が得られた。次年度も機会を見つけ解析数を増やしていきたい。 LAO上流域解析については、ウシ乳腺解析を繰り上げて開始させた事から、次年度に重点的に行う予定でいる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には前年度に引き続き解析を行って行く。 組換えタンパクの作製については、早急に可溶化の検討を終了させ組換えタンパクの精製と活性測定に移行したい。酵母系とカイコ系で得られたLAO不溶化分画は、同じ界面活性化剤で可溶化できると考えられるため、まずはカイコ系におけるマウスLAOの可溶化検討を15種類の界面活性化剤用いて行う(業者依頼)。候補界面活性化剤が得られたならば、酵母系におけるマウスおよびウシLAOの不溶化分画を用い可溶化を行う。その際に使用する界面活性化剤の最低濃度を求め、可能な限りLAOタンパク活性への影響を防ぐ。その後、LAOタンパクの精製を行い、活性測定の検討を開始する。一方、カイコ系においてマウスLAOの活性が認められたならば、ウシLAOの作製も依頼する予定でいる。以上、酵母系とカイコ系両方を走らせ、活性を保持したLAO組換えタンパクの作製を終了させたい。 Tgマウスの作製については、得られた1匹の雌マウスとLAO KO雄マウスを交配させ子を得ると共に、母マウスのミルク中のウシLAOタンパクの存在をFLAGタグ抗体を用いて検出する。その後、マウスLAO(-)ウシLAO(+)の個体を作出し、表現系の解析を行う。バックアップとして、マウスBACクローンを購入しマウスLAOタンパクコード領域内にウシLAO cDNAを挿入したコンストラクトの作製を開始する。 LAO上流域解析については、スタートコドンより上流3kbのクローニングを開始する。また、現在、マウスとウシの乳腺上皮細胞を用いたLAO発現解析を既に開始しており、LAO発現が誘導される条件を探索している(ホルモン処理や脱メチル化、および様々な栄養素添加など)。上流域解析と共に、今後如何にしてLAO発現量を高めていくかの基礎データとなる事が期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究費の内、約30万円を次年度に繰り越した。理由としては、当初予定していたTgマウス作製費用を共同研究として執り行なう事で必要なくなったためである。その研究費分を、カイコ系を用いたLAO組換えタンパク作製を外部業者に次年度も依頼したいと考えている。 その他、次年度の研究予算は消耗品の使用が主に占めると思われる。
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