本研究の目的は、L型アミノ酸オキシダーゼ(LAO)を用いた乳房炎抵抗性ウシ作出の有用性について検討を行うために、ウシ型LAO組換えタンパクの作製とウシ型LAO発現Tgマウスを作製する事である。今年度の成果は以下の通りである。 <ウシ型LAO組換えタンパクの作製>哺乳細胞、酵母およびカイコ発現系を用いて、ウシ型LAO組換えタンパクの作製を行い、カイコ発現系において最終的に2mgのウシ型LAO組換えタンパクを得た。得られたLAO組換えタンパクは必須アミノ酸存在下で過酸化水素を発生させることから、ウシ型LAOタンパクはマウス型と同様に抗菌性を示す可能性が高い。現在、ブドウ球菌に対する抗菌試験を行っている。 <ウシLAO Tgマウスの作製>前年度に引き続き、乳腺特異的WAPプロモーター制御性ウシLAO発現Tgマウスの作製をおこなった。現在、ウシLAO遺伝子を持つTgマウスが得られ、LAO欠損マウスとの交配を行っている。マウスLAO欠損ウシ型LAO発現個体が得られ、数が揃った時点でin vivoブドウ球菌経乳頭感染実験を行う。 <LAO発現解析>マウスにおいてLAOは泌乳中に高い発現が見られることから、LAO遺伝子は泌乳ホルモンにより制御されることが示唆されてきた、しかし、マウスおよびウシ乳腺上皮細胞に対して泌乳ホルモン処理を行ってもLAO発現の上昇は認められなかった。さらにマウス(B6マウス)およびウシ(ホルスタイン)のLAO上流約2kbの上流域解析を行った結果、泌乳ホルモン処理では転写活性の上昇は見られなかった。マウスの妊娠初期と泌乳期の乳腺組織におけるメチル化解析の結果、泌乳期においてヒストンH3K27のメチル化の減少が確認され、乳腺上皮細胞に対するTSA処理でLAO発現の上昇が確認された。ウシにおいても同様の結果が得られており、LAO発現にはクロマチン構造の変化が必要となる可能性が示唆された。
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