研究概要 |
本年度は受精時のCa2+放出に重要な役割を持つ小胞体上のイノシトール3リン酸受容体タイプ1(IP3R1)についてブタ卵およびマウス卵を用いて検討を行った.まず,体内および体外で成熟させたブタ卵におけるIP3R1の発現量,リン酸化量および局在について検討した.その結果,両区間に発現量,リン酸化量および局在には差がないことが明らかとなった.しかし,マウス卵ですでに報告されており,受精時のCa2+放出に重要であると考えられていたIP3R1の卵細胞膜付近でのクラスター形成は,ブタ卵では認められなかったことから,両種間には異なるIP3R1の制機構が存在している可能性が考えられた.また,IP3R1の制御にかかわる因子を同定する目的で,卵の成熟に重要な役割をもつことが知られているp34cdc2 kinase,MAPKおよびPlk1について,それぞれの阻害剤であるroscovitine, U0126およびBI2536でブタ卵を処理し,IP3R1の発現量に及ぼす影響を検討した.その結果,roscovitineおよびU0126はIP3R1の発現量に影響を及ぼさなかったが,BI2536は処理濃度依存的にIP3R1の発現量を著しく減少させた.このことから少なくともブタ卵においてはPlk1がIP3R1の発現に関与していることが考えられた.さらに受精時のCa2+シグナルが,その後の胚発生にどのような影響を及ぼしているのかについて,シンシナティ小児病院(Dr. SK Dey)で特に着床時に果たす役割について検討をした.その結果,受精時にPLCzによって加水分解されたPIP2により産生されたジアシルグリセロールが,着床時のシグナルに関わっている可能性が考えられた.
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