研究課題/領域番号 |
24780275
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
山村 崇 独立行政法人農業生物資源研究所, 動物生産生理機能研究ユニット, 任期付研究員 (60582723)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | GnRH / パルス状分泌 / ニューロキニン / キスペプチン / ダイノルフィン |
研究概要 |
性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)のパルス状分泌の制御に関与していると考えられている内因性のニューロキニンB(NKB)およびダイノルフィンA(Dyn)の弓状核における役割を明らかにするために、マイクロダイアリシス法を用いた濃度変動解析手法により、弓状核のNKBおよびDynの分泌動態の解析を行った。 まず、弓状核の細胞外液を採取するためのシバヤギを用いたマイクロダイアリシス法を確立した。具体的には、ヤギを麻酔下で脳固定装置に保定し脳室造影を行い、第三脳室の形状をもとに弓状核キスペプチンニューロンの局在部位を決定し、マニピュレータを用いてガイドカニューレを決定した座標に誘導し、デンタルセメントによりカニューレを頭蓋骨に固定した。約1ヶ月の回復期間後、ヤギが覚醒した状態でマイクロダイアリシスプローブをガイドカニューレに挿入し、還流することで細胞外液を回収できることを確認した。 また、本手法によるマイクロダイアリシスプローブを介した際のNKBとDynの回収率を確認したところ、NKBは約15%と良好であった。しかし、Dynに関しては約5%で、しかもDynが使用しているプローブやラインに吸着しやすく、濃度変動を本手法を用いて解析することが困難であることが確認された。 そこで、NKBに焦点をしぼり濃度変動解析を行った。数頭の去勢ヤギから弓状核の細胞外液を流速2マイクロリットル/分で2~3時間にわたって10分毎にプールしたものを採取し、EIA法によりNKBの濃度測定を行った。しかし、期待された明瞭なパルス状の変動は確認されなかった。 ヤギを用いて、マイクロダイアリシスを用いた細胞外液採取法を確立できたこと、また実際にNKBが弓状核で分泌されていることを確認できたことは、GnRHのパルス状分泌の機構を明らかにする上で非常に重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マイクロダイアリシスによる濃度変動解析法と合わせて、神経活動記録法による弓状核キスペプチンニューロンの神経発火活動と血中LH濃度変動を同一個体から同時に解析し、これらの関連性からパルス状分泌の発現機構を解明する予定であった。しかし、マイクロダイアリシスによる濃度変動解析法の確立に時間を多く費やしてしまい、当初の予定を達成できなかった。しかし、本研究の大きな目的の一つであった濃度変動解析法が確立できたため、今後は本手法を用いて迅速に目的を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
NKBの濃度変動解析であるが、本年度使用した去勢ヤギでは自然条件下とは異なる短い間隔(約30分)のLHパルスが起きており、時間分解能が低いマイクロダイアリシス法ではNKB分泌動態を正確に捉えられていない可能性が考えられたため、次年度はエストロジェンを代償投与し、LHパルス間隔を延ばした(約1時間)動物を用いて解析を行い、弓状核の内因性のNKB分泌動態を明らかにする。さらに、神経活動記録法と血中LH濃度変動を同時に同一個体から解析し、パルス状分泌におけるNKBの役割を明確にする。 また予定している、弓状核を含む視床下部スライス培養法により、上記で得られた結果を元にしたNKB濃度の変動をメディウム上で再現し、GnRHのパルス状分泌を誘起できるかを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
マイクロダイアリシス法による細胞外液の回収をより簡便に正確にするために、フラクションコレクターの購入を予定している。また本研究課題の遂行に必要な実験動物、マイクロダイアリシスのためのプローブやチューブなどの消耗品、濃度解析のためのEIAキット、プラスチック器具、ガラス器具、試薬類等の購入に研究費を使用する。 また、研究成果を学会にて報告するための旅費、誌上発表のための経費として研究費を使用する。
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