研究課題/領域番号 |
24780277
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
水谷 英二 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (80443034)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | クローン / イメージング / 胚発生 |
研究概要 |
クローン胚のイメージング解析を行い、個体発生可能な胚の条件を検索する本研究において、確実にクローン個体が作成できるドナー細胞を用いることは重要である。そこで平成24年度はまず本研究室でクローンマウスからクローンマウスを作出する再クローニングが25世代以上も可能であったBDF1×129マウスに着目した。クローンマウスが生まれやすいドナー細胞を用いた場合のクローン胚の染色体動態を解析するため、ヒストンH2Bおよびチューブリンをプローブとしてイメージング解析を行った。ドナー細胞として上述のBDF1×129マウスおよび対照としてBDF1マウス卵丘細胞を用いた。どちらのドナー細胞を用いた場合でもクローン胚はイメージング解析下で胚盤胞期まで発生した。染色体解析の結果、第一卵割では染色体異常を起こした胚の比率はどちらのドナーを用いた場合でも同様に約30%であった。今後、BDF1×129マウスクローン胚で第二、第三卵割において染色体異常が起きているか解析し、胚移植実験も同時に行っていく予定である。 また、 X染色体不活化を指標としたクローン胚の解析としてmacroH2Aを指標としたクローン胚のX染色体不活化の解析をmacroH2A-GFPトランスジェニックマウス卵丘細胞をドナー核としたクローン胚のイメージング解析を行った。 クローン胚においても、macroH2Bのシグナルが解析可能となるのは通常受精卵と同様に4細胞期後期からであった。シグナルは検出できたものの、同一クローン胚内でも各割球でシグナルの数、強度がばらばらであり胚発生の指標とするためには、今後さらに詳細な解析が必要である。 さらにクローン作出が可能なエピジェネティック修飾状態の異なる細胞を検索し、抑制的ヒストンメチル化が低い脳神経細胞を見出し、ここからクローン個体を得ることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度において、mRNA注入法およびトランスジェニックマウスを用いたクローン胚のイメージング解析を行い、染色体動態およびX染色体不活化を指標としたクローン胚の発生解析を行うことができた。クローン胚の胚移植実験まで行い個体発生能を比較する予定であったがそこまで至らなかった。理由としては研究代表者が年度途中で異動となり、それに伴う引っ越し作業などで研究を一時的に中断せざるを得ない状況となったためである。現在は新たな所属先で実験機器のセットアップも完了し核移植実験も滞りなく進められる上に、クローンになりやすいマウス系統を用いて行っていくことで今後は順調に研究計画が遂行できるものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、染色体動態およびX染色体不活化を指標としたクローン胚の胚移植実験をすすめ、またマイクロアレイによる遺伝子発現解析も行っていく。さらに初期発生過程での異常がntES細胞の樹立成績や性質にどう影響しているのかをイメージング解析後のクローン胚からのntES細胞樹立によって調べる。具体的にはクローン胚を選別し個体になる可能性があるクローン胚、なり得ないクローン胚に分けてそれぞれntES細胞樹立を行い、樹立したntES細胞の性質を、核型検査、マーカー発現検査、分化誘導実験およびキメラマウス作成により解析する。特に個体発生できないと判断された胚からのntES細胞についてその性質を解析する。 また、微細な分子修飾状態変化を検出できるFRET法を用いてクローン胚のヒストン修飾状態を解析し、クローン成功率につながるメカ二ズムを解明する手法を確立していく。まずは受精卵を用いて卵子でのFRET観察条件を確立し、その後クローン胚での解析を行っていく。この際、これまでにクローン成功率改善の報告があったHDACiや阻害するHDACの部位が異なる新規HDACiで処理したクローン前核期胚のヒストンアセチル化状態をFRETにより解析し、クローン成功率に関連するヒストン修飾状態の変化、HDACiがクローン成功率に効果を及ぼすメカニズムを明らかにする。 さらに、エピジェネティック修飾状態の異なる種々のドナー細胞由来クローン胚の発生過程をFRETおよびライブセルイメージングにより解析し、各細胞のクローン成功率と合わせて個体発生の鍵となる現象を明らかにしていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者の異動に伴う一時的な研究中断により、予定していた消耗品の購入が行えなかったため、次年度繰越金が生じた。しかしながら本研究ではできるだけ多数のクローン胚を作出し、ntES細胞樹立や胚移植により解析するため、胚培養および細胞培養用の試薬類およびレシピエントマウスが必須である。また、合わせて遺伝子発現解析も行うため、免疫蛍光染色やマイクロアレイ、PCRのための抗体および試薬を購入する必要がある。さらに、イメージング解析を軸とする本研究では大量の画像データを保存するためのハードディスク(HD)も多数必要である。繰り越した金額はこれら消耗品代として使用する計画である。
|