研究課題/領域番号 |
24780279
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐々木 道仁 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 博士研究員 (70609403)
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キーワード | ヘルペスウイルス / ウマ / レセプター / MHCクラスI / ウサギ |
研究概要 |
本年度は、EHV-4糖タンパク質glycoprotein D (gD)の可溶化組換えタンパク質の作製を行った。作製したEHV-4 gD組換えタンパク質がウマMHCクラスI分子発現細胞に特異的に結合することをフローサイトメトリーにより確認した。この結果から、MHCクラスI分子のリガンドとして新たにEHV-4 gDが同定された。 次に、MHCクラスI分子のリガンドであるgDの結合領域を探索する目的で、遺伝子工学的手法を用いてgDの部分欠失変異体を複数種類作製し、各変異体を細胞に導入、発現させ、可溶化組換えウマMHCクラスIタンパク質の結合をフローサイトメトリー法により評価した。しかし、作製した全ての欠失変異体が可溶化組換えウマMHCクラスIタンパク質との結合を示さなかった。また、一部の欠失変異体は細胞表面に発現せず、変異体の作製法等の見直しが必要と考えられた。 また、感染細胞に緑色蛍光蛋白質であるGFPを発現するEHV-4レポーターウイルス(EHV-4 GFP)を使用して、各種培養細胞に対するEHV-4の感染性とMHCクラスI分子のEHV-4レセプター機能を解析した。他の研究グループからEHV-4はウサギ腎臓由来培養細胞株RK13の細胞内に侵入できず感染が成立しないことが報告されている。しかし、EHV-4 GFPをRK13細胞に接種したところ細胞はGFP陽性を示し、過去の報告と異なりEHV-4はRK13細胞に感染することが明らかとなった。また、EHV-4非感染細胞であるハムスター卵巣由来CHO細胞にウサギMHCクラスI分子を発現させると、細胞はEHV-4感受性を示した。これらの結果からEHV-4はウサギMHCクラスI分子をレセプターとしてRK13細胞に感染することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書の研究計画に記載した実験を順調に遂行し、MHCクラスI分子のリガンドとしてEHV-4 gDを同定し、MHCクラスI分子が有するEHV-4レセプター機能の解明に重要な知見を得た。さらに、EHV-4がウサギMHCクラスI分子をレセプターとしてRK13細胞に感染するという、あらたな知見を見出し、本研究を当初の計画以上に発展させる知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に作製した組換えEHV-4 gDタンパク質および組換えEHV-1 gDタンパク質を用いてEHV-1およびEHV-4の感染阻害実験を行い、組換えタンパクが有するウイルス感染阻害効果を評価する。また、新たに見出したウサギMHCクラスI分子が有するEHV-4レセプター機能を組換えgDタンパク質との相互作用実験や抗MHCクラスI抗体、siRNA等を用いた感染阻害実験を行うことでさらに詳細に解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
組換えタンパク質作製実験が順調に進んだため使用する試薬が節約できた。また、次年度の研究計画ではこれまで以上の抗体や核酸試薬、細胞培養関連試薬量の使用を計画しており、次年度の研究に余裕ができる様経費節減に努めた。 次年度の研究遂行に必要な抗体や核酸試薬、細胞培養関連試薬の購入に充てる。 また、次年度は成果発表のための論文作製と投稿を計画しており、一部の繰り越し分は英文校閲サービス利用料金や論文掲載料金の支払い等、論文発表に必要な費用に充てる予定である。
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