本年度は、まず前年度開発したIBAVコア粒子を用いて人工合成したcore mRNAを用いたIBAV遺伝子操作系(RGシステム)を改良した。しかし、他のオルビウイルスのRGシステムに比べるとまだ効率が悪いため、本来予定していた全IBAV RNAを T7ベクターから人工合成して用いるT7システムによる変異ウイルスを作製は難しいと判断した。そこで、core mRNAと、T7ベクターから人工合成した変異T7S9ssRNA とのリアソータント法を用いて変異ウイルスを作製し、ブルータングウイルス(BTV)のRG実験(英国Roy教授との共同実験)と合わせて、以下の成果を得た。 まず、オルビウイルス VP6には、複製に関与しない領域が共通して存在することを明らかにした。BTV VP6に存在する欠損させてもその三次構造に影響しないループ領域が、IBAV VP6にも存在することを明らかにした。その領域を欠損させたウイルスをBTVとIBAV、両方のRGシステムでそれぞれ作製したところ、IBAVとBTVの両方で、ループ構造の半分の領域を欠損させたVP6をもつウイルスは、野生型ウイルスと同様の複製能をもつことが分かった。 次に、VP6の複製に関与しない領域に様々なタグを挿入した、VP6-tagged IBAVを作製した。三種類のVP6-tagged IBAVは、野生型IBAVと同様の複製能をもち、また、各タグに対する抗体等を用いて、感染細胞内でのタグ付きVP6(tagged-VP6)の動態を観察できた。 tagged-VP6が機能的であることが証明されたため、tagged-VP6を恒常的に発現す細胞を作製し、ヘルパー細胞とした。このヘルパー細胞を用いて、VP6のVP3結合に必須であるアミノ酸に変異を挿入した変異IBAVを作製した。これらの変異IBAVは、BHK細胞では、粒子形成不全のため、増殖するこ出来ない可能性を示唆するデータを得た。 また、マウス肝細胞で観察されたIBAV複製の抑制はウイルスタンパク合成の段階で起こっていることを示唆するデータを得た。
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