研究課題
動物の情動と代謝は連動して日長に反応する。本研究では、短日条件において長日条件よりも高いうつ様行動(強制水泳試験の無動時間)および低い脳セロトニン含量を示すマウスを用いて、日長による情動・代謝の制御メカニズムを解析した。短日飼育群では、セロトニンの前駆体であるL-トリプトファンの脳内含量が長日飼育群に比べて低く、またL-トリプトファンの脳移行率を決定する血漿中L-トリプトファン/大分子中性アミノ酸比も低い値であった。さらに、末梢臓器代謝を強く反映する種々の血漿中遊離アミノ酸濃度が短日飼育群で高い値を示したこと、また糖耐性にも日長の影響が強く見られたことから、末梢代謝が脳セロトニン神経系の日長反応性に関与すると示唆された。そこで、日長が脳機能や筋肉・脂肪に及ぼす影響について経時的に解析した。4週間の短日飼育群では、長日飼育群と比べて低い脳セロトニン含量や高いうつ様行動が確認された。また、腓腹筋における筋繊維型の割合や筋代謝関連遺伝子の発現についても、4週間の時点で日長間の有意な差が見られた。一方、精巣上体脂肪量については、8週間以上の短日飼育により有意な増大が見られた。筋肉代謝は血中の大分子中性アミノ酸濃度に強く影響を及ぼすことから、筋肉と脳の連関が情動行動の日長反応性に関与する可能性が考えられた。次に、高照度光を利用して生体の日長反応性の制御を試みた。短日条件で高照度光を照射すると、うつ様行動の抑制とともに、縫線核の各種領域におけるセロトニンの免疫陽性細胞数や神経活性の増加が見られた。さらに、NMDA受容体のコアゴニスト、D-セリンの前駆アミノ酸であるL-セリンを光照射前に投与すると、光による抗うつ様効果やセロトニン神経活性が増強された。以上より、日長の季節変化にともなう生体反応を光やアミノ酸栄養により人工制御できる可能性が示された。
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