研究課題/領域番号 |
24780288
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
井澤 武史 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (20580369)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 肝硬変 / 動物モデル / 鉄代謝 / 鉄調節因子 / miRNA |
研究概要 |
鉄代謝の維持に関わる分子メカニズムを解明するために,一過性の鉄代謝障害(鉄過剰,鉄欠乏)モデルラットを作製した.鉄過剰モデルは,ラットに鉄過剰食(0.5%鉄含有)を自由摂餌投与(最大4週間)することにより作製した.鉄欠乏モデルは,鉄欠乏食の自由摂餌投与(最大4週間)により作製した.対照群には,正常食を投与した.また,肝硬変における鉄代謝障害のメカニズムを調べるため,チオアセトアミド誘発肝硬変ラットの解析も併せて実施した.全身の鉄代謝変化を調べるために,肝臓,脾臓,骨髄および血清を採取した.得られたサンプルを用いて,病理組織学的解析,生化学的解析(血清鉄,肝鉄含有量)および分子生物学的解析(RNA,蛋白)を実施した.鉄過剰および鉄欠乏モデルラットでは,投与後2週から,それぞれ血清鉄(TIBC)の上昇および低下が認められた.また,血清鉄と関連して,血清鉄飽和度(TS)の上昇および低下がみられた.鉄過剰食投与後4週では,肝臓鉄の上昇が観察された.鉄欠乏食の投与では,肝臓鉄の軽度低下が認められた.これらの鉄代謝障害は,正常食の2週間投与により,正常レベルにまで回復した.一方,肝臓の病理組織学的検査では,鉄過剰および鉄欠乏モデルにおいて,明らかな形態学的変化は観察されなかった.肝硬変モデルでは,鉄過剰の進展に伴って,発現上昇あるいは低下を示す77種のmiRNAが認められ,そのうち8種は鉄調節因子の発現調節に関わる可能性が示された.また,2種のmiRNAは線維化との関連が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的は,肝硬変の進展に重要な役割を果たす鉄代謝の分子メカニズムを解明することである.本年度は,生体の鉄代謝をコントロールする鉄調節因子群の生理学的役割を調べるために,鉄過剰および鉄欠乏モデルラットの作製を実施した.両モデルラットは,肝細胞障害を伴わない可逆的な鉄代謝障害モデルであり,鉄調節因子の生理学的役割を調べる上で有用なモデル動物を作製することができた.また,次年度に計画していた肝硬変モデル動物の解析にも一部着手した.したがって,本年度の研究は,研究目的に従っておおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,次年度に予定していた肝硬変モデルラットの解析を一部先行して実施したため,当初計画していた鉄代謝障害モデルラットの遺伝子解析を実施できなかった.そのため,次年度はこの遺伝子解析を始めに行ない,鉄代謝障害モデルの病態解析を完了させる.得られたデータをまとめ,鉄代謝の維持に関わる各種鉄調節因子の生理学的役割を明らかにする.続いて,肝硬変モデルの遺伝子解析を行ない,肝硬変における各種鉄調節因子の発現動態を調べる.得られたデータを鉄代謝障害モデルと比較検討することで,肝硬変の鉄代謝障害の分子メカニズムを追究する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は321,550円であり,今年度実施できなかった鉄代謝障害モデルラットの遺伝子解析に使用予定である.主な用途は,RNA抽出試薬,逆転写反応用試薬(mRNA,miRNA),リアルタイムPCR用試薬,in situ hybridization用試薬である.なお,解析に用いるサンプルについては,今年度に必要数を採取済みであるため,次年度の使用計画には含まれない.
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