研究課題/領域番号 |
24780290
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
河合 康洋 東京理科大学, 付置研究所, 助教 (00416281)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | pKnox1 / 精原細胞 / 増殖 |
研究概要 |
造血幹細胞の分化に関与するpKnox1が、精子形成の初期段階である精原細胞より終末分化した精子に発現しており、成体マウス精巣でpKnox1を欠損した場合、精子形成不全となるという申請者の知見に基づき本申請研究では、精原細胞の未分化能の維持ならびに精子への分化におけるpKnox1の詳細な発現ならびにその機能について、pKnox1コンディショナル欠損マウスを用いて解析し、精原細胞の未分化能の維持および精子への分化の転写制御ネットワークをpKnox1の観点から解明する。 成体マウス精巣内におけるpKnox1発現細胞の同定を行った所、pKnox1陽性細胞は初期精原細胞のマーカーであるPLZFおよび可逆性を失った精原細胞のマーカーであるc-Kit陽性細胞と共局在する事が明らかとなった。まず、成体精巣における精子形成過程へのpKnox1の役割を解析するため、タモキシフェン投与により全身性にCreを核内へ誘導できるRosa26-CreERT2; pKnox1F/Fマウスを用いて解析を行った。タモキシフェン投与3週間後に腔胞化し萎縮した精細管が散見され、精子形成が減数分裂へ移行する以前で不全となっていることが確認された。次に生殖細胞内在的にpKnox1が機能しているのかを確かめるため、生殖細胞特異的にpKnox1を欠損させうるTNAP-Cre: pKnox1F/Fマウスを用いて解析を行った。その結果、前述Rosa26-CreERT2; pKnox1F/Fマウスの表現型がより重篤化していることが確認された。また、両pKnox1欠損マウス精巣内に精原細胞は存在したが、c-Kit陽性精原細胞で分化が停止し、増殖能に異常がある事が確認された。 これらの結果より、pKnox1は精原幹細胞においてc-Kit陽性細胞の増殖あるいは生存に関与する転写因子である事が明らかとされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度計画において以下に述べる3つを予定としていた 1.各分化段階の精細胞におけるpKnox1発現細胞の同定 2.精原細胞の維持ならびに分化におけるpKnox1の機能の解明 (I. 時期特異的ならびに精原細胞特異的pKnox1欠損マウスを用いた解析) 3. 精原細胞の維持ならびに分化におけるpKnox1の機能の解明 (II. 精原細胞の維持・分化に関与する既知分子との相互作用を解明) 1.については、pKnox1陽性細胞は、精原幹細胞においては認められなかったが、その次の分化段階であるPLZF陽性細胞から減数分裂前の精原細胞であるc-Kit陽性細胞で共局在する事が確認されたことより、計画が予定通り遂行された。 2.については、I. 時期特異的ならびに精原細胞特異的pKnox1欠損マウスを用いて解析を行い、両pKnox1欠損マウス精巣において精原幹細胞のマーカーであるGFRa1陽性細胞の凝集塊が認められたが、減数分裂前のc-Kit陽性精原細胞までの存在が確認された。つまり分化に異常は認められないが、c-Kit陽性細胞の増殖あるいは生存に異常が認められる事が明らかとなった。 3.については、pKnox1欠損精巣に認められた表現型から、増殖および生存に関与する事が知られている遺伝子をリストアップするとともに、pKnox1欠損細胞およびコントロール細胞の採材が修了している。今後は、これらのサンプルを基にリストアップした遺伝子の発現解析をqPCRにて行う予定である。従って、計画は予定通り進行しており、解析準備が整っている状態である。以上のことから、平成24年度に計画された実験はおおむね順調に遂行されていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度計画としては1.精原細胞の維持ならびに分化におけるpKnox1の機能の解明 (I. 精子形成不全マウスへの移植法を用いた解析) 2. 精原細胞におけるpKnox1の標的遺伝子ならびに転写因子間相互作用の解明を計画している。 1.については、pKnox1が精原細胞の増殖および生存に機能している事は明らかとなったが、精原幹細胞に認められた異常の原因は不明であるため、精原幹細胞の維持・分化に影響があるか否かを明らかとする必要がある。そのため、精原細胞の自己複製能ならびに分化能におけるpKnox1の機能をより詳細に解析するために、精子形成不全であるW/Wvマウス精巣への精原細胞移植による精子形成再構成の実験系を用いる。すなわち、平成24年度実験計画2で用いたRosa26-CreERT2-pKnox1floxマウスを用いる。本マウス精巣から精原細胞を単離し、W/Wvマウス精巣に移植する。移植細胞が定着した後、経口投与によりタモキシフェンを投与することによりpKnox1の欠失を誘導し、精子形成再構築について免疫組織学的に解析する。 2.については、平成24年度実験計画3で用いた材料を用いて遺伝子発現変化についてマイクロアレイ法により網羅的に解析する。発現変動の認められた遺伝子については定量的PCRおよび免疫組織学的解析を行い、確認する。また、得られた解析結果から精原細胞の維持ならびに分化におけるpKnox1の発現制御機構を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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