研究概要 |
肝毒性時に見られる肝脂肪滴発現メカニズムとして、細胞内小胞輸送機構の異常による細胞内脂質滞留を想定し、その証明を試みた。その端緒として、細胞内小胞輸送機構のもっとも初期段階であり、タンパク合成と脂質代謝の場である小胞体(ER)からの輸送小胞形成過程に着目した。そこで、ERからのタンパク小胞輸送機構であるCOPII小胞輸送と、ERからの脂質小胞輸送システムであるPCTV輸送がコンポーネントを共有しているのではないかと考え、知見が集積されつつあるCOPII小胞輸送機構解析モデルを用いて、PCTV輸送特異的タンパクが関与していないかを検討することにした。H24年度の研究において構築した、COPII小胞のコート形成過程の解析モデルを用い、H25年度にはPCTV輸送に関与が疑われている候補タンパクが、ERからの輸送小胞形成に関与しているかどうかを、検討した。候補タンパクとして、CD36、APOB100、CIDE B、Vamp-7、FABP-1を選び、ER膜への輸送小胞コート様の移動が見られるかどうかについて、調べた。その結果、CIDE-Bが輸送小胞のコート様の挙動を示すことがわかった(第156回日本獣医学会2013岐阜、および学術雑誌投稿中)。また、ERからの輸送阻害由来の細胞障害の解析を行った結果、その制御機構について、一定の知見を得ることができた(Mastumoto et al., Bio. Open, 2013)。CIDE-Bは細胞死制御タンパクでもあり、今後更なる研究の展開が期待できると考えられる。現在CIDE-Bの関与を証明するために、ノックダウン細胞における脂質分泌量の低下を検出しようと、実験中である。さらに、研究の過程でER-Golgi間の輸送を評価する系を作出し、学会発表に至っており(第40回日本毒性学会2013千葉)、学術雑誌に投稿中である。
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