研究課題/領域番号 |
24780301
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
井関 博 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所 ウイルス・疫学研究領域, 研究員 (90548207)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 豚 / ウイルス / PRRS / 遺伝子 / 診断 / 繁殖 / 呼吸器 / 流産 |
研究概要 |
2007年から2010年の間に分離された複数株のウイルス分離株を豚肺胞マクロファージを用いて増殖させ、限界希釈法にてウイルスのクローニングを行った後、ウイルスの力価測定を実施して一時冷凍保存した。これまで蓄積してきた日本国内の野外分離株を含めた保存ウイルス液の一部からRNAを抽出し、RT-PCRによりone step RT-PCRのターゲット領域を増幅させた。ダイレクトシークエンシング法により塩基配列の解析を行い、マルチプルアライメントから株間での遺伝子変異箇所を確認した。 診断法開発 (1)HP-PRRSV遺伝子を特異的に増幅するPCRプライマーをデザインするため、HP-PRRSVに共通して確認されているnsp2遺伝子の欠損領域を利用した。また、HP-PRRSV遺伝子を検出しない従来型のPRRSV遺伝子のみを増幅するプライマーもデザインした。 (2)HP-PRRSV遺伝子を特異的に検出するプライマーセット(NSP-HPFおよびNSP-R)を用いたRT-PCRでは、HP-PRRSV分離株20検体から特異的な遺伝子増幅が確認され、国内分離株およびワクチン株の遺伝子は増幅されなかった。また、従来型PRRSV遺伝子のみを検出するプライマーセット(NSP-NONHPFおよびNSP-R)を用いたRT-PCRでは、open reading frame 5による遺伝子分類で全て異なる系統に分類される5つの野外株に対して遺伝子の増幅が確認され、HP-PRRSV遺伝子に対しては増幅が見られなかった。 以上のように、申請時に掲げた初年度の予定通り、HP-PRRSに対するい診断法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに進展しているが、当初の計画以上ではない。これは、当初の計画の次年度に続く実験が動物実験のため、前倒しで実施できないためである。現在、開発した診断法の実用性を評価するため、日本国内の様々な遺伝子系統のウイルスを用いて、非特異的反応がどの程度生じるのかデータを蓄積している。また、本年度後半に開始する動物実験に使用するウイルスの調整を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は豚を用いた感染実験を実施する。 豚群は①HP-PRRSV実験感染群、②ワクチン接種後HP-PRRSV実験感染群、③従来の北米型PRRSV接種後HP-PRRSV実験感染群、④従来の北米型PRRSV接種のみの対照群、⑤対照群の5群を各8頭ずつ計40頭用意する。ブタはSPFの離乳後3週齢の個体を購入し、導入後1週で豚群②に市販ワクチンを常法に従って筋肉内投与、豚群③及び④には北米型PRRSVの日本標準株を鼻腔内噴霧感染させる。実験開始前日から体重及び体温の測定を毎日実施し、ウイルス接種後は1日間隔で血液を回収する。抗体産生が十分に誘導されると考えられる3週後にHP-PRRSVを鼻腔内噴霧感染させ、以降1週間経過するまで毎日血液、唾液、糞便を回収する。2週間目は1日間隔、3週後は2日間隔と徐々に採材間隔を広げていき、採材材料からウイルスが消失するまで開発したone step RT-PCRにより測定を続ける。各実験群の8頭中4頭は、咳や発熱等最も臨床症状が激しく観察された時点で解剖を行い、病理学的な解析に供する。採材材料から乳剤を作製し、感染性を有したウイルスがどの程度残存しているのかを肺胞マクロファージを用いたタイトレーションにより評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験は一人では実施できないため、研究補助員の人件費を計上している。また、採材のための資材(注射針、シリンジ、口腔液採材器等)や採材後の検体保存用資材(クライオチューブ、遠沈管、フィルターチップ等)、さらに検体からのRNA抽出試薬や遺伝子解析試薬等の消耗品を中心に計上している。3年度の計画のうちで2年度目が最も経費を必要とする計画となっている。
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