研究課題/領域番号 |
24780301
|
研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
井関 博 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所 ウイルス・疫学研究領域, 研究員 (90548207)
|
キーワード | 豚 / ウイルス / PRRS / 遺伝子 / 診断 / 繁殖 / 呼吸器 / 流産 |
研究概要 |
今年度は、我が国の北米型豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)の標準株(EDRD1株)を用い、高病原性(HP)-PRRSV感染に対する免疫の交差性を検証する感染実験を実施した。感染実験群は、Group 1(n=5): EDRD1株接種群、Group 2(n=5): EDRD1株接種4週後にHP-PRRSVを接種した群(EDRD1・HP-PRRSV混合感染群)、Group 3(n=6): HP-PRRSV接種群、Group 4(n=5): 対照群の4群を用意した。手順は下記の通り実施した。 ① EDRD1株をGroup 1および2に鼻腔内接種。体温と体重は試験期間中を通して一定間隔で記録。 ② EDRD1株接種4週間後に、HP-PRRSVをGroup 2および3に鼻腔内接種。 ③ 接種後の臨床症状を記録し、適宜血液および口腔液を採材・保存。 ④ HP-PRRSV接種2週後に病理解剖を実施。 感染実験の結果、HP-PRRSV単独接種群では、接種3日後から試験終了日まで40℃以上の高熱が持続し、1/6頭が重篤な呼吸器症状を呈して12日目に死亡した。一方、EDRD1・HP-PRRSV混合感染群では、HP-PRRSV単独接種群に比較して有意に体温の上昇が抑制され、増体率についても無処置対照群との間に有意差が認められなかった。さらに、EDRD1・HP-PRRSV混合感染群は、臨床症状として主に一過性の発熱および軽度の呼吸器症状のみが観察され、HP-PRRSV単独感染群に見られたような重度の呼吸器症状や持続する高熱は認められなかった。以上のことから、我が国に特徴的であり野外ウイルスの大きな割合を占める遺伝子系統に分類されるEDRD1株によって豚に成立する感染免疫は、HP-PRRSV感染に対して強い交差免疫を示すことが臨床症状から示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに進展しているが、当初の計画以上ではない。これは、今年度実施した実験内容は豚を用いた感染実験であったため、前倒しで実施できないためである。また、感染実験の採材検体処理を目的に人件費を計上しており、契約研究員を募集したが、良い人材の募集がなかった。このことも計画以上に進展がなかった大きな理由として挙げられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今回実施した感染実験の採材試料からのデータの採取・解析を行う。具体的には、血清、口腔液、臓器中に含まれるウイルス量および病理変化を各試験群で比較するとともに、特異抗体あるいは中和抗体の産生を解析する。また、初年度に開発した従来型とHP-PRRSV遺伝子を特異的に検出するRT-PCR法を用い、双方のウイルスの体内動態を解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に大量に発生する採材検体の処理を目的に人件費を計上していたが、人材の応募がなかったために次年度使用額が発生した。次年度もこれらの採材検体の処理が残っているため、引き続き人材の募集を行う予定である。 次年度使用額として生じた金額は人件費として計上するが、今後も人材の応募がなかった場合には不足している消耗品費に転用する。
|