研究課題
イヌジステンパーウイルス(CDV)感染サル組織内、及び組織間のquasispeciesのバリエーションの決定及び比較、そして決定した遺伝子配列をベースとしたリバースジェネティクス系を確立する。そこで、(I)感染サル各組織を出発材料にRT-PCRを行いCDV全ゲノム領域を増幅し、次世代シーケンサーを用いてダイレクトシークエンシングを行う。この結果から各組織で増殖しているquasispeciesの塩基配列バリエーションを厳密に決定、比較する。次に(II)真に組織内で優勢に増殖しているCDVゲノム配列を決定後、これをベースとしたリバースジェネティクスシステムを確立し、in vivoでのゲノム配列を保持した感染性のあるウイルスを作製する。本年度は感染性ウイルスを回収するリバースジェネティクス法の確立を目指した。ウイルスゲノムRNAを産生するための完全長ゲノム発現プラスミド、ウイルスRNA合成に必要なタンパク質をトランスに供給するためのN, P, Lタンパク質発現プラスミドを作製を行った。その際、まずシークエンシング用cDNA断片作製時に使用した各PCR産物をそれぞれプラスミドベクターにクローニングし、それぞれのPCR産物がオーバーラップする領域に存在するユニークな制限酵素サイトを利用してそれらを接続し、ウイルス完全長ゲノムを作製する。なお、CDV cDNAの最下流3’末端側には、合成されるCDV RNAが、適切な位置で切断されるようにするために、自己切断活性のあるD型肝炎ウイルス由来リボザイム)を付与する。作製したCDV完全長ゲノム発現ベクターとウイルスタンパク質N,P,L発現プラスミドをT7 polymeraseを構成的に発現する細胞にトランスフェクトし感染性を持つウイルス粒子を得る。
2: おおむね順調に進展している
当初は次世代シークエンシングによって、感染ザル組織内で真に優勢に増殖しているCDVゲノム配列を決定後、これをベースとしたリバースジェネティクスシステムを確立する予定であった。だが、配列決定を行う前にリバースジェネティクスシステムを確立したほうが研究の遂行が容易であると考え、本年度はリバースジェネティクスシステムの確立を目指した。現時点で、システム構築の最難関である、15.6KbのウイルスゲノムRNAを産生するための完全長ゲノム発現プラスミドを完成させた。これにより本課題の遂行がより加速すると考えられる。
まず初めにリバースジェネティクスシステムの完成を目指す。ウイルス完全長発現プラスミドは完成したので、残るはN, P, Lタンパク質発現プラスミドと同時にトランスフェクションをして感染性を持つウイルス粒子を得る。N, P, Lタンパク質発現プラスミドは本株から作製する。一方で麻疹ウイルスのN, P, Lタンパク質発現プラスミドが代用可能であるため、これを使用して、システムが問題なく動くかを確認する。
試薬・薬品・培養液、プラスチック器具購入費に130万円を充てる予定である。他に研究成果発表のための国内、国外旅費、論文校閲費、学会誌投稿料に50万円を充てる予定である。
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