研究課題/領域番号 |
24780308
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
板本 和仁 山口大学, 獣医学部, 准教授 (50379921)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ネオスポラ / イヌ / 髄膜腫 / MRI |
研究概要 |
本研究では、犬のネオスポラ感染症が犬の頭蓋内の腫瘍性疾患発症への関与を明らかにすることを目的とし以下の実験を実施した。平成24年度は主に血清および脳脊髄液検体、腫瘍生検サンプルの収集、MRIを設置した協力小動物診療施設より髄膜腫サンプルの収集を実施した。また神経症状とN.caninumの関連性を明らかにするために、神経症状が疑われた症例を中心に139検体、神経症状を呈していない症例70検体の血液サンプルを収集しており、IFA検査による抗体保有状況の調査を実施した。発作を呈する症例における陽性率を調査したところ、特発性てんかんにおける陽性率は低く(3.2%)、症候性てんかんにおいて陽性率が高い(13.3%)という結果が得られた。疫学情報の解析は画像情報の解析を適宜実施している。性差や犬種特異性は認められなかったが、300人/km2以下の人口密度の低い地域において陽性率が高い傾向を認めた。また髄膜腫がMR画像上疑われた症例の抗体陽性率は37%と他の疾患に比べて高い値を示した。脳腫瘍サンプルは6検体あらたに集積し、HE標本による評価を実施したが、いずれも原虫虫体の発見には至っておらず、髄膜腫の腫瘍発生と原虫感染の因果関係を示唆する結果は現段階では得られていない。3検体は凍結検体を得られたため、次年度で凍結切片を作成、免疫染色を実施する。またまた脳脊髄液サンプルは24検体集積した。健常犬の脳脊髄液サンプルも23検体集積しており、これらのIFAを用いた検体希釈条件を検討し、収集サンプルのCSFIFAも一部実施済みである。全検体においてMRI等の画像情報も収集しているが画像情報の解析が一部遅れている。また他研究機関に依頼して、CSFの遺伝子学的検索も実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血清および脳脊髄液検体、腫瘍生検サンプルの収集と解析を実施している。近隣のMRIを設置した協力小動物診療施設および当大学の獣医病理学研究室の協力のもと脳腫瘍や脳炎が疑われた症例の血液、脳脊髄液、病理組織サンプルの収集を実施しているが、ディープフリーザーが昨年10月頃故障し、検体の集積が遅れ気味であったが、同年12月に更新し、予定集積数に脳脊髄液サンプルおよび血液サンプルは到達した。血液サンプルは随時血清学的な検査を実施しており、また脳脊髄液の検査も順次実施中である。しかしながら病理組織サンプルがまだ少なく、協力病院に依頼中である。既に収集した物と併せて、免疫染色による追跡調査を実施する。また疫学情報は随時、解析しているが、MRIの画像情報が解析できておらず、今後の解析を順次実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
病理組織サンプルの集積をのぞいては、おおよそ予定通りにサンプルの集積、解析が実施できているが、組織サンプルの集積数が当初予定より少ない為、さらに協力病院をつのり、収集およびその病理組織学的評価を加速する。また米IDEXX研究所の協力を依頼中であるが、脳脊髄液サンプルの遺伝子学的検索も新たに導入予定である。したがって脳脊髄液のサンプルを追加で収集する必要性が生じている。またMRIを用いた画像情報のデータベース化、解析を加速させ、画像も含めた疫学情報をまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はディープフリーザーの不具合により新規更新を要したが、大学運営交付金での更新が可能であったため、計画書において要求設備備品として計上した費用に残予算が生じた。しかしながら、次年度において新たに脳脊髄液の遺伝子学的検索を導入予定であり、そのための検体送付雑費、PCR関連消耗品も増加する事が予測されるが、残予算の繰り越しで対応可能であると思われる。継続して集まったサンプルの当初予定の遺伝子学的検索、血清学的検索を実施予定である。
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